2021年4月。
「選択的週休3日制」の導入が検討されている。
選択的週休3日と聞いて、どう思いますか?
「休みが増えたら嬉しい」と思う人もいるでしょう。
私の感想は真逆です。
「もし実現したら、泣く人が増えるだろうなぁ」と思いました。
選択的週休3制とは、どんな制度か?
選択的週休3日制とは、大きく分けて2パターン。
1つは「週休3日にする代わりに給料を減らす」パターン。
常識的に考えるなら、働く日数が4/5になるので、給料も4/5。
つまり「月収は20%減少」ということ。
2つ目は「週休3日する代わりに、1日の労働時間を増やす」パターン。
「1日8時間の週休2日」が「1日10時間の週休3日」になる。
残業が当たり前の会社では、5日分の残業を4日に振り分けることになるでしょう。
「給料を維持して選択的週休3日制」にする会社は、まずあり得ません。
理由は会社にデメリットしかないからです。
休日が増えるということは、仕事量が減る。
「仕事量は減る」が「人件費のコストは維持」したら、株主は「私の配当金を減らすようなことするな」と怒ります。
選択的週休3日制が必要な理由
選択的週休3日制の狙いとは何でしょうか?
政府の発言によると
つまり「育児、介護、闘病」のため。
しかし日本にこれらの制度はないのでしょうか?
「育児休暇」「育児休業」「介護休業」の制度はそろっていいます。
病気の場合は「傷病手当金」。
これらの制度に問題があるなら、見直せば良いとは思いませんか?
わざわざ新たに制度を作り、分かりづらくする意味があるのでしょうか?
更に言うと「週休3日制にしてはいけない」という法律はありません。
禁止されてないから、バイトやパートというフルタイムではない働き方が存在しています。
では、なぜ週休3制を政府は検討しているのでしょうか?
「本音と建前」があるということです。
選択的週休3日制の狙いは何だ?
選択的週休3日制の真の狙いは何でしょうか?
その本音がチラホラ漏れていると思われる資料が下記。
(画像は内閣府の経済財政諮問会議の資料)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0413/shiryo_01-1.pdf
私は課題の中にある「事業環境が激変する中、企業内で人材を抱え続けることは困難」という理由が選択的週休3日制を導入する狙いだと思います。
「選択制」を選択するのは強者である
選択制を選択するのは誰でしょうか?
もちろん形の上では「労働者と経営者の合意」です。
しかし、この合意というのは曲者で「両者が内容を理解し気持ちよく合意する」とは限らない。
特に力関係に差がある場合は。
では経営者側と労働者では、どちらの立場が強いでしょうか?
それは状況によって変わります。
景気が良いときは労働者の立場が強くなる。
「景気が良い」ということは「消費の需要が高い」ということ。
その需要に対応するためには、その分だけ人手が必要になる。
つまり「会社は人手不足」になっているということ。
人手不足で困っているときに、働く人が集団で「売上伸びてるでしょ?給料を上げてよ」と言われたら、経営者は無下に断れない。
現に日本の景気が良いときにはストライキ(労働争議)の件数が多い。
ストライキとは「給料を上げろ。働く環境を良くしろ。やらないならサボるよ」という労働者が団結して交渉する権利です。
このストライキが活発なときは、それだけ働く人の立場が強いということ。
今の日本はどうでしょうか?
日本は「失われた20年」と言われいるぐらい景気が良くない。
このような状況では経営側が強い。
新型コロナの影響で、自粛により経済は悪化し、多くの人が解雇されました。
真っ先にその対象となったのは「非正規」と呼ばれる人。
この非正規という立場が、経営改善の調整弁になったということです。
私が経営者なら「より経営を容易くするため調整弁を増やしたい」と考えます。
そのためのひとつの手法が、この「選択的週休3日制」。
経営が悪化したときに「リストラをチラつかせながら、週休3日制に追い込む」という選択肢が生まれます。
もしあなたに稀な能力がないなら、合意に追い込まれる可能性がある、ということです。
デメリットがあっても選択するか?選択的週休3日制
自ら週休3日制を選択する人はいるでしょう。
個人的な事情がある人もいるでしょうから。
ただデメリットを考えずに、安易に選択するのは良くありません。
もし私の友人に、週休3日制を選択する人がいたら言います。
「出生は諦めろ。解雇される優先順位は高いと思え」と。
仕事にはトラブルが付き物。
大きなトラブルを解決するために必要になるがマンパワー。
そんなとき「週5日働ける人」と「週に4日働ける人」では、どちらが頼りにされるでしょう?
私なら、そもそもとして週に4日しか働けない人には、責任が重い仕事を渡すのに躊躇する。
責任の重い仕事を渡すことに躊躇される人が、出世できるのでしょうか?
どんな仕事を任されるかによって経験の差にもなる。
また週4日勤務の上司が、週5日勤務の人を管理するのも難しい。
これらの状況を考えると週休3日制を選択した人は、どう見てもハンディキャップ戦です。
選択する人は、どんなハンディがあるかを想定して下さい。
私は「選択的週休3日制とは、正社員と派遣社員の間に、新たな階級を作るための制度」だと思っています。
だから現行の法律でも週休3日制はできるのに、わざわざ政府に検討させて「政府が推進している」という大義名分を得ようとしている、というのが現在起きていることだと思っています。
選択的週休3日制は、先の日本を考えるとむしろ逆でしょ?
日本は少子高齢化社会です。
今後、何十年も続きます。
私は「少子化は日本でもっとも大きな問題」だと思っています。
少子高齢化社会になると「消費者数はあまり変わらない」のに「労働者数は減少」します。
人口予測では「20歳~65歳の割合」はしばらく下がり続ける。
これは日本という国は「一人の労働者が多くの消費者量に対応しないといけない社会なる」ということです。
週休3日制して労働力を減らす余裕が、どこにあるのでしょうか?
もちろん技術革新があれば、少ない労働者が多くの消費量に対応できる可能性はあります。
ただし多くの長期予測は外れます。
今までも多くの会社が、長期予測を外してきました。
会社というのは、株主に対して「うちの会社は将来明るいですよー」と言って金を集めます。
なので心の中では「無理だろ」と思っていても「できます」と言わないといけない状況に追い込まれます。
出来るかどうか分からない技術革新に夢見るより、現実的な路線で考える方が賢明だと思います。
選択的週休3日制が導入され、多くの人が選択した場合、少子化の問題を悪化させるだけです。
おさらい
- 選択的週休3日制は、容易い経営環境を作るための調整弁。
- 週休3日制を選択したら「出世は厳しい」と思え
- 選択的週休3日制は、少子化の問題を更に大きくする。