就職率(内定率)の本当の数字。統計のごまかし

今回は就職率に関する「ごまかし」について。

就職関係のニュースでよく耳にする言葉。
「2020年大学卒業した人の就職内定率は98%でした」

これを聞いた人は「大卒は100人いたら98人が就職できているんだ」と思うでしょう。

統計というのは、目安として利用するのは非常に便利。
その一方では、統計の手法によっては、相手を勘違いさせるは簡単なんです。

今回は「統計に騙されんな」について。

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異常なほど高い就職率

下記のグラフは「大卒の就職率」のグラフ。

このグラフを見ると「就職氷河期やリーマンショックの就職難の時期でも大卒は、9割以上は就職をしている」と読み取れるでしょう。

 

 

しかし、その時期に就職した人に聞くと「そんなわけがない」と言う。

どういうことか?
この就職率には計算式に問題がある。

その式は「就職率=就職人数/就職希望者数」という計算式。

注目は分母の「就職希望者」。
就職希望者とは「就職したいと思っている人数」。

つまり「もう諦めた」と言う人は含まれない。

 

では調査した時期はいつか?
それは「卒業式も終わった4月1日時点の調査」である。

多くの会社は夏ごろに内定が決まり、求人はどんどん減っていく。
それでも諦めず「4月1日になっても諦めない不屈のファイター」と「就職が決まった人」が就職希望者として残る。

だから非常に就職率が高い。

10月以降に上がる内定率

就職率の他に「内定率」という言葉もある。

就職率と内定率は調査する時期が違うだけ。

4月に調査すると就職率。
10月・12月・2月に調査したら内定率という名前になる。

就職率と内定率を並べると、下記のようになる。

就職率と内定率の推移

結果を見ると「就職率(内定率)は、10月から4月にかけて上がっていく」ことが分かる。

しかし先ほど述べたように、10月頃には求人募集している会社は少数です。

 

一方で下がり続ける就職希望率

次に就職希望率。
就職希望率とは「就職を希望する人数/卒業者数」で計算される。

このグラフを見ると、10月・12月・2月と進むと徐々に希望者率は下がり、4月になると大きく下がる。

就職希望率の推移

 

卒業者数は大きく変化するはずがないので、就職希望者がどんどん減っているということ。

減る理由は「諦めたという人が増えるから」以外に理由があるでしょうか?。

本来は「諦める・諦めない」は関係なく「卒業者数」が基準になり、その中で「就職できた人数」が就職率になると思うのですが・・・。

 

本当はある。信頼性の高い就職率

ここからはバカみたいな本当の話。

就職率を調査しているのは厚生労働省。
厚生労働省が扱う分野が広いのだが、労働関係も扱う。

なので就職率を調査している。
その調査して「どのような政策が必要なのか?どのような法律が必要なのか?」を考える材料になる。

一方で文部科学省というところもある。
ここは学校関係を扱う所。

ここは学校の実態は把握する一環で「学校を卒業した人がどうなったのか?」を調査している。

その名も「卒業者に占める就職者の割合」というもの。
この計算式は「就職者/卒業者数」になっている。

つまり「何人が卒業して、その中の何人が就職したの?」という数字。
私達が一般的に考える就職率とは、こちらではないだろうか?

 

そして厚労省と文科省では、調査方法にも違いがある。

厚生労働省は抜き取り調査。
抜き取り調査とは、代表的な学校をピックアップして調査しているので、実態とはズレることがあり得る。

一方で文部科学省の調査は、学校が把握している数字を全て集計している。

つまり精度も文部科学省の方が高い。

それでは文部科学省が調査している「卒業者に占める就職者の割合」がグラフにしたのが下記。
悪いときは55%しか就職できず、良いときは78%。

卒業者に占める就職者の割合の推移

 

大学院への進学する人9.4~13.4%。

卒業者に占める進学者の割合の推移

 

次に「一時的な職についた人」は1.4~4.6。
要はバイトの人。

卒業者に占める一時的な職に付いた人の割合の推移

 

次に「進学も就職も一時的な職にもついてない人」が6.7~22.5%。
要は無職。

卒業者に占める就職・進学・一時的な仕事をしてない人の割合の推移

 

全体を積み上げと下記のようになる。

卒業者に占める割合の推移

(上記のグラフに表示されてない残りは「研修医」や「海外の学校」や「不詳・死亡」など。)

 

厚生労働省の「就職率」と文部科学省の「卒業者に占める就職者の割合」を比較すると・・・。

就職率と卒業者に占める就職者の割合の比較

 

就職率が、いかに実態を表せてないか・・・。

「卒業者に占める就職者の割合」と近いのは「10月時点の内定率」である。

 

考えてみれば、10月の内定率が実態に近いのは理にかなっている。
10月には求人がほとんど残ってないため、ここからは諦める人が増えていくなのだから。

ニュースを見るときに「就職率」を鵜呑みにするのは止めよう。
参考にするのなら10月時点の内定率」にしましょう。

 

みんなが知りたいのは「大卒は安定した職につけるか?」でしょ?

この文部科学省のデータには「大卒が正規なのか?非正規なのか?」を2013年から調べている。

バイトや非正規や無職を「安定した職に付けなかった人」にすると下記のようなグラフになる。

安定した職に付けなかった人、付けた人の推移

 

大卒で就職すると「60~75.2%」が正規、10.9~22.9%は「安定した職に付けてない」ことが分かる。

皆さんが知りたいのは、このようなデータではないだろうか?

統計を取る目的ってなんだっけ?

厚生省と文科省も同じ日本政府。
なぜ同じ日本政府が取る調査で、こうも結果が違うのか?

報道されやすいのは、厚生労働省の就職率(内定率)。
そして就職率は「経済の指標にもなる」と思われている。

就職率が高いなら「この政権はうまく経済政策をやっている」と思わすことができる。

けど政府が統計を取る目的ってなんでしたっけ?
それは統計を見て次の政策を考えること。

その統計が実態を表していないなら、良い手が打てるわけがありません。

 

そして「就職率」は経済の景気だけを表す数字でもない。

就職率は「新卒人口」と「定年人口」でも変わる。
「会社が人はこれ以上はいらない」と思っても定年退職で、どんどん人が抜けていくなら補充が必要であり、就職率は高くなる。

この「新卒人口」と「定年人口」を簡易的に比較するなら「大卒と高卒の中間である20歳」と「定年が多い60歳」の推移を見ていけば良い。

その推移が下記のグラフ。

20歳人口と60歳人口の比較

日本は少子化がひどい。

2009年~2019年の10年間で20歳になった人数は約1350万人。
一方で60歳になった人数は約1850万人。

その差である500万人ほど「働く世代」は減っている。

同じ効率で同じ消費量なら、就職率が上がるのは必然なんです。

 

数字に騙されるな

私はものづくりで働いていて、統計や数字をよく使います。
お客さんや上司を説得するときに、数字を見せることで説得力をもたせる目的で。

数字は説得力があるからこそ、勘違いさせられる。

騙されないためには「調査方法は?」「いつのデータか?」「計算式は?」「見せ方にトリックはないか?」などなど見ていくしかない。

それと「肩書」も騙されてはいけない。
「学者が言っているから信じよう」「偉い人が言ってるから信じよう」という考え方は、「データを見るのが面倒」という証。

「誰が言ってるのか?」ではなく「何を言ってるのか?」で考えていきましょう。