今回は車の税金に関わる走行税の話。
地方に住む人にとっては、ガソリン価格は生活に直結する。
車がないと会社にもいけないし、買い物も厳しい。
そんな中で「導入されるかも」と話題になっているのが走行税。
この走行税は政府が検討段階で、まだ何も公式に決定されていない。
噂されている話では
- ガソリン税の代わりに走行税を導入(されるのではないか)
- 1キロメートル当たり5円(になるのではないか)
という予測。
特にこの「1キロメートル当たり5円」という数字は、NHKが参考までにニュージーランドで実施されてる税率を報道した。
ニュージーランドと日本では、経済規模も人口も違う。
「違うのに同じ税率なのか?」と言われたら微妙。
ただこの「1キロメートル当たり5円」というは、考えれば考えるほど「よく出来ている」と思えるほど絶妙な数字。
では、この走行税が現実になったら「誰が得して、誰が損するのか?」
走行税で得する人、損する人
走行税はガソリン税の代わりと言われている。
つまりガソリン税が廃止され、新しく走行税になる。
では、ガソリン税はいくらでしょうか?
合計で53,800円
1リットルに換算すると53.8円。
そこに消費税10%に加わるので税金は59円になる。
ガソリン税に消費税さ上乗せされる二重課税になっているが、不思議と維持されている。
(不思議というか、ただ単に税金を取りたいだけなのだが)
この税金をゼロにして、代わりに走行税が「1km当たり5円」になった場合、得でしょうか?損でしょうか?
これは乗っている車の燃費によって変わる。
この11.8km/Lは、一般的に燃費と呼ばれる。
「1リットルで何キロメール走れるか?」という値。
燃費が11.8km/Lの場合は、
- ガソリン税:1km走ることに(59/11.8=)5円を負担
- 走行税:1km走ることに5円を負担
になり同額になる。
つまり損も得もない。
燃費が悪く車、例えば8km/Lの場合は
- ガソリン税:1km走ることに(59/8=)7.3円を負担
- 走行税:1km走ることに5円を負担
になり2.3円負担が減る。
逆に燃費が良い車、例えば燃費16km/Lの場合は
- ガソリン税:1km走ることに(59/16=)3.6円を負担
- 走行税:1km走ることに5円を負担
になり2.4円負担が増える。
グラフにすると下記のようになる。
「燃費で1円、2円の差を出されてもピンとこないよ」という人のために「10万km走行した場合」に換算すると。
私は燃費8km/Lぐらいの車に乗っている。
「だから得だ。ラッキー」ではなくて・・・これっておかしくないですか?
車は燃費が良い車を買うときに減税される。
なぜ減税されるのか?
それは「環境に良い」から。
しかし走行税を導入すると燃費による税負担が変わらなくなり、環境に逆行した税金になる。
すでにある環境と逆行する車の税金
環境と逆行する税金は、すでに存在している。
それは自動車税。
自動車税とは毎年4月に収める税。
自動車税は登録してから13年経過すると約15%税金が上がる。(軽自動車は20%)
他にも重量税も13年、18年経過すると税金が上がる(車検のとき支払う税金)。
これは「新しい車の方が環境に良いでしょ」というのが増税の理屈。
けどね。
車って何十年も同じ車種が売っている。
例えばエスティマという車は2006年から2019年まで同じ。
マイナーチェンジという小さな変更はあるが、基本性能は変わらない。
変わらないのに、登録年数で税金が変わる。
もちろん劣化する部品もあるが、それは交換すれば良いだけだし、排ガスの検査は車検で行っている。
なにより「使える車は捨てて、新しい車に買い換える」行為ほど環境に悪いものはない。
製造時に使う大量のエネルギーは無視して、完成品のみで環境を評価しているのが環境税。
これでは「環境のために税金を取るのか」「税金を取るために環境を利用しているのか」はたまた「中古車を買わせず新車を買わせるための税金なのか」分からない。
実はハイブリッドはあまり得はない
ハイブリッドという電気とガソリンを併用した車がある。
特徴は燃費が良い。
ハイブリッドは燃費が良いから得だと思っている人もいるが、実はあまり得してない。
それは「車体価格の差を燃費でなかなか埋められない」という現実がある。
どういうことか?
同じ車種でガソリン車とハイブリッド車の価格差を調べてほしい。
小型車であればハイブリッドの方が、おおよそ30万円高い。
小型ガソリン車の燃費は約15km/L、同じ車をハイブリッドにすると22km/Lぐらい。
(カタログ値は1.5倍ぐらい高いが、街乗りするとこんなもん)
ガソリン価格が140円だとすると、車体価格を回収するのには10万km以上走らないといけない。
ざっくり言うと、5万kmごとに15万円が回収できる。
ガソリン価格が落ちれば、更に走らないと回収ができなくなる。
そう考えると「思った以上に得が無いな」って思いませんか?
現状のハイブリッド車は「先払いか?」「後払いか?」による違いで、あまり得はない。
もちろん出始めのハイブリッドはもっとひどかった。
少しずつ良くなり、ようやく見えてきたハイブリッド車の得を打ち消してしまうのが走行税になる。
走行税は誰が言い出したのか?
そもそも走行税は誰が言い出したのか?
それは石油連盟という石油会社が集まった組織。
なぜ石油連盟が走行税を要望しているのかは簡単。
それは「燃費が良い車ばかりになるとガソリンが売れない」からです。
私が走行税はあり得ると思うのは、石油連盟は大量の政治献金を投入しているからです。
ただし石油連盟が走行税を要望しているのは、かれこれ10年前ずっと。
その間、なぜ走行税が実現できてないのか?
その理由も簡単。
自動車会社が拒んでいるからです。
先に書いたように、現状でもハイブリッドは自動車ユーザーには得があまりない。
しかし自動車メーカー目線では、単価が高い車を売れば、それだけ多くの利益が取れる。
走行税など導入されたら困るのは自動車メーカー。
だから・・・と思えるほど、自動車関連も多くの政治献金を渡しているのです。
つまり献金合戦で自分の利益を確保しようとしている。
そもそも政治献金とは何でしょうか?
目的が利を得るための資金でなければ、株主が怒ってしまいますよね。
企業イメージが上がるわけでもなく、ただお金を失うほど経営者や株主はバカではないし、キレイでもない。
それでも走行税が来ると思わせる理由
走行税はかなり前から要望があるが、導入されてこなかった。
しかし「ちょっと待った」をかけるのがガソリンの税収。
燃費の向上によって税収は下がっている。
燃費の向上は、構造が大きく変わらない限りそろそろ限界。
けどまだまだ10年前、20年前に車は走っていて、買い換えると燃費は上がり、税収は落ちる。
そこに加えて少子化+高齢者の免許返納。
誰が考えてもガソリン税は減る一方。
単純にガソリン税を上げると、生活に直結するため評判が悪い。
誤魔化すためには目くらましが必要。
そこで現れるのが走行税・・・になると思いませんか?
走行税が実現するかは、業界同士の争いだけではなく、そこには税金を取る側の狙いも含まれる。
そんな中で無視されているのは、自動車ユーザーや地方に住む人ではないでしょうか?