2019年10月に消費税が10%に上がった。
消費税が5%だったときは「まぁまぁ、しょうがないよねぇ」と思っていた。
それから消費税が8%になると仕事で付き合いのある会社が潰れた。
それでも「しょうがない」と思えたのは「消費税は社会保障のため」と聞いていたから。
でもそれって本当だろうか?
消費税は社会保障のため?
消費税は「社会保障のため」と言われているが本当だろうか?
お金には色がなく、どの税金が何に使われているかは分からない。
ただ分かることは、消費税で増税した分は税収が増えているはず。
税収が増えていないなら社会保障として支出できるはずもない。
1985年から2018年の税収入を見てみると・・・
1990年と2018年は、ほぼ同じ税収になっている。
税収の内訳を比較してみると・・・
所得税と法人税は6.1兆円の減税。
その代わりに消費税が13.1兆円の増税されている。
「1990年は景気が良かったから、法人税や所得税が少なかったんじゃないの?」と思うかもしれませんが、経済規模が大きいのは2018年。
1990年に比べて2018年は、約100兆円のお金が日本国内に回っている。
普通に考えれば税収は増えているはず。
では、どのように所得税は減収されているのか?
所得税はどのように減税した?
所得税を減税することは、家計から見たら悪いことではない。
むしろ生活が楽になる人が増えたら良いことに思える。
ではどのように減税されてきたのか?
1990年と2019の所得税の比較をしてみる。
単純に所得税の「税率」を並べただけはよく分からない。
所得税の計算はちょっとややこしくて、例えば2019年の税制で年収500万円の人が20%の所得税を取られるわけではない。
所得税の負担率を計算してみると・・・
このような計算になる。
これと同じ計算をして所得税の「負担率」を1990年と2019年を比較すると・・・
更に分かりやすく「変化」の部分をグラフにすると・・・
どの年収も等しく減税されたわけではない。
あまり減税されてないのは平均所得に近い、年収300万円~700万円であり約2.1%~3.2%。
大幅に減税されているのは3000万円~1億円であり5.9%~7.2%。
ここまでで言えること。
それは「消費税は所得税の減税に使われ、特に年収が3000万円などの高年収の人が大幅に減税された」ということ。
一方で壊れている法人税
次に法人税の話。
ここ数年、日本の会社は大企業を中心に調子が良い。
その証拠に純利益はとても高くなっている。
純利益とは「色んな経費や税金を払った残りの金額」。
その一方で法人税はまったく上がっていない。
下記のグラフは会社の「純利益」と法人3税と呼ばれる「法人税+法人住民税+事業税」の推移。
会社が払う法人3税は、笑えるほど壊れてしまい利益がどれだけ伸びても、税収は増えない。
試しに法人3税の金額がほぼ同じである「2007年」と「2018年」で比較してみると・・・
「法人3税の税収はほぼ同じ」だが「税引前利益は1.75倍」になっている。
なぜこんな状態なのか?
これは2つの要因がある。
ひとつは長年、法人税は消費税が上がる度に下げられてきたこと。
そしてもうひとつは、法人税はたくさんの減税処置があり、2013年頃から大減税が始まったからである。
なので実際の法人税率より、かなり低い平均値になる。
ここから言えること。
それは「消費税は会社の税金を減税するために使われている」ということ。
消費税が社会保障のために増税されたのであれば、税収も上がり支出も増えているはず。
しかし消費税が上がっても、同額の法人税と高所得者が減税されているのが事実。
もし「消費税は社会保障のため」と思われていた人は言うべきでしょう。
「ふざけてんのか」と。
その他にある消費税のメリット
消費税の必要性は社会保障だけではなく、その他にもある。
一般的に言われていることは
- 脱税が難しい
- 税収が安定している
- 税の公平な負担
である。
しかしこれすら本当だろうか?
消費税は脱税が難しいのは本当か?
消費税の脱税が難しいかどうかは国税局の統計を見てみれば分かる。
まずは「脱税の告発件数」が消費税と他の税で大きな差があるのか?
このグラフを見て消費税は脱税が少ないと言える?
では次に「脱税の金額」を見てみよう。
消費税が脱税が少ないと言える数字だろうか?
「昔は」消費税の脱税は少なかったのは事実。
それは単純に税率が低く脱税するメリットがないから。
脱税とは犯罪。
ミスならともかく故意に数字をイジって脱税しようとする人が、消費税だけ脱税しない理由などない。
消費税は安定した財源なのか?
消費税は安定した財源だというのは、税収を見れば正しい。
法人税や所得税は景気の影響を受けるので、バラツキが大きくなる。
消費税は「アジア金融危機」があっても「リーマンショック」があっても安定している。
但し「税収が安定している」からといって「税として安定している」かは別の話。
消費税というのは滞納が多い税金。
税の滞納の半分は消費税である。
消費税は滞納も安定して高い。
これは会社が安値競争で、どうしても消費税を価格に転嫁できない会社がある。
価格に乗せられないと本来は消費者が負担する消費税を会社が負担することなるので、滞納になってしまう。
そこに何より「税が安定している」ことは良いことなのだろうか?
「税収が安定している」という意味は「あなたが不安定でなときでも税は取る」という意味。
リストラが増えようが、会社が潰れようが、病気で働けなくなろうが、一定の消費をしないと死んでしまうから、消費税は安定させられる。
「それでも良い」と思うか「それは悪い」と思うかは、もう税の問題ではなく人間性の問題である。
消費税の公平な負担なのか?
「消費税は公平な負担なのか?」という問題は難しい。
消費量に合わせて同じ税率という意味では公平と言える。
一方で所得税は累進課税と言われ、所得が多いほど負担率も上がる。
消費税を逆累進性と呼ぶ人もいる。
これは所得が低い人ほど全て消費する傾向で、所得が高い人は消費せずに貯蓄に回る。
「だから消費税は逆累進性だ」と。
これにはちょっと疑問。
お金なんて持っていても価値はなく、使って初めてモノやサービスという価値と交換できる。
「価値の交換量」という意味では「消費税は公平」と言える。
けど考えをもう一歩進めると「税は公平で良いのか?」という疑問にぶち当たる。
これが非常に悩ましい。
なぜ税の基本は累進課税なのか?
皆さんは給料で稼げば、税金が多く取られることについて、どう思いますか?
私は「努力して頑張ったのに報われないのは、おかしいな」と思います。
では「頑張った人が報われていますか?」と言われると微妙。
私の会社という小さな社会で見ると
- 頑張ったから評価されている人もいる
- たいして頑張ってないが上司とゴルフして酒を飲んで評価されている人もいる
- 頑張っているが上司に「おかしいものはおかしい」と声を上げたばかりに評価されない人もいる
- 取引先から天下りして上司になった人もいる
といった感じです。
なんとなく頑張った人が評価されているっぽいけど、バラツキは非常に大きい。
もっと世の中を広く見てます。
親から一等地を相続した人は、駐車場にしておけば寝ていてもお金が入る。
これは努力した人が報われているでしょうか?
日本の大企業の45%、中小企業の90%は同族経営と呼ばれ、家族で経営しています。
その家の長男で生まれれば、将来は社長になれます。
これって公平でしょうか?
年収1億円を稼ぐ人がいて、きっとその人は努力をしたと思うが、年収300万円の人の33年分の努力を1年で行ったってこと?
人の3倍、4倍は努力出来たとしても33倍は可能な数字だろうか?
1億円を稼ぐ人のたいていは効率良く稼ぐ方法を見つけたってこと。
その効率良く稼ぐ方法は、お金を使って他人にお金を稼いでもらうことです。
これって平等でしょうか?
大企業は昭和初期から続く会社が多く、ずっと同じ位置をキープしています。
入れ替わりはほとんどありません。
中小企業で働いている人は努力が足りないのでしょうか?
なぜ、こんなことになっているのか?
それは資本主義だから、なんだよね。
資本主義とは、お金を使って他人の努力を使って利潤をもらう仕組み。
ベースとなる資本主義が努力し生産活動するより、お金でお金を産んだ方が効率が良く、それを推奨している。
だからそれを補うため所得税のような累進課税になっている。
累進課税は一人ひとりで見ると、不平等があり得る仕組み。
本来は個人を見て判断できればベストだけど、そんな仕組みは不可能だし「誰がどの視点で公平と判断するのか?」という問題もある。
だからざっくりと「お金を多く稼ぐ人は、他人の努力も利益に入っているだろう」という推測の元で、課税されるのが累進課税。
累進課税は税制だけで見たら不公平。
消費税のような同じ負担率にするのが公平。
けど社会全体を広く捉えると、資本主義のベース上にある累進課税は公平に近づけるものであり、消費税のように公平な負担を求めることが不公平になる。
ただ、どの程度の累進性が良いかは人それぞれ感覚によって違う。
例えるなら「腹減っている人の隣で飯食って美味いか?」という感覚。
「消費税+富裕層減税+法人税減税」が景気悪化の原因では?
日本は近年でまったく経済成長が出来ていない。
それを表す指標がGDP(国内総生産)。
下記のグラフはGDP伸び率ワーストランキング。
2000年から2017年の伸び率は212国の中でワースト4位が日本。
他の国は戦争・紛争をしている国だけ。
はっきり言って異常値です。
景気が悪いとはどういう意味か?
簡単に言うと「お金が流れる量が少ない」ということ。
私が1万円を使い、受取った人が翌日にそのお金を使わないといけないゲームをしたとする。
それが1ヶ月経過すると1枚の1万円で、30万円分が消費される。
逆に私が1万円を貯蓄したとすると、1ヶ月で消費された金額はゼロ。
つまり「お金が流れる量を増やして続けること」=「経済成長」になっている。
ところが日本はこの30年で何をしたか?
消費税により消費させにくい状況を作った。
富裕層の所得税を減税して貯蓄に回った。
これだけでもお金が回る量は減少する。
そして企業へ減税。
消費が増える期待があれば、会社は「儲かるかも、新しい工場を作ろうかな。良い製品を作るため開発にお金かけようかな」と投資を始めるが、消費が増える見込みがない。
これが世界でも類を見ないほど、経済停滞している原因ではないだろうか?
おさらい
- 「消費税増税は社会保障のため」は建前
- 消費税は所得税・法人税減税のため
- それをごまかすためのウソは多い