終身雇用制度とは新卒で雇用された人が、定年まで同じ会社で働き続ける制度。
皆さんはこの制度をどう思いますか?
賛否あると思われる終身雇用だが、実はあまり賛否なく支持する人は年々増え続けている。
下記のグラフは終身雇用を支持する人の割合を世代別にしたもの。
2015年には全世代ともに85%以上の人が終身雇用を支持している。
このグラフを見ると3つの特徴が見えてくる。
1.約20年前の1999年には若い人ほど終身雇用を支持する人が少なかったが、近年は若い人も支持が増えている。
3.下記の表は2004年と2015年を抜粋して比較したもの。
11年の差があり20代は30代へ、30代は40代へ歳を取ったわけです。
年齢を重ねると「終身雇用を支持する」という人の割合が増えている、ということが分かります。
支持する人が増えている終身雇用制ですが、実はもうすでに崩壊しているのです。
私たちは、未来を予測して働き方を変えないといけないのです。
終身雇用が成立する前提は年功序列
まず前提として終身雇用は年功序列とワンセットでなければなりません。
年功序列とは年齢というより勤続年数に応じて、給料が増えていく仕組みです。
出世することで役職手当が加算されていきます。
年功序列の反対は成果主義。
成果主義とは年齢に関係なく、成果によって給料が変動する仕組み。
もし「終身雇用+実力主義」の場合、どうなるのでしょうか?
給料が「初任給からずっと変わらない人」と「給料が上がり続ける人」が二分化されるはずです。
終身雇用では転職先もないため、ずっとこの状態が続きます。
給料が上がらない人を「頑張らない本人に責任がある」という意見もあるでしょう。
しかし泣くのは、大人ではなく子供です。
日本は教育費が高く、子供の年齢に応じて費用は上がっていきます。
特に高校と大学は私立に通う人も多く、学費は高額になります。
もし給料が上がらないのであれば、増えていく学費を払うことができません。
それに対応しているのが年功序列です。
つまり、年功序列とは子供にかかる費用に応じて、給料の上昇カーブを描く仕組みです。
親の収入が増えないと子供は意思とは関係なく学校に行けなくなります。
子供は学校にいけないと収入が低くなる可能性が高く、その子供も貧乏になるというループが生まれます。
そのような社会ではきっと「子供は作らない方が良い」という考えになり少子化は加速します。
終身雇用制度を維持するための方法は、私立大学・高校を含めて学費を大幅に下げるか、年功序列にするしか成り立たないということです。
会社はもう年功序列を維持できない
会社には組織図がありますが、役職が上がるにつれて人が減っていきます。
この組織図を年功序列で維持するためには、若い人が多く年齢が高い人が少ないと成り立ちません。
では、働く人の年齢はどうなっているのでしょうか?
下記のグラフは2000年の働く人の人口です。
2000年のときは若い人と年齢が高い人に差がほとんどありませんでした。
この状態で年功序列をキープできていたのは、女性の地位の低さです。
日本は仕事においては男性中心の社会です。
女性は出産などで退職する人が多いので、勤続年数はゼロに戻り年功序列のレールから外れることで成り立っていました。
2018年では少子化により若い人が大幅に減っています。
年齢が高い人が多い社会では、年齢に応じて役職に付ける事ができないのです。
私の会社には「部」や「課」はありますが、「係」はありません。
しかし係長はいます。
「係」がないのに「長」がいるという、訳が分からない組織になっています。
これは会社が無理に年功序列を維持しようとした跡です。
そして40歳、50歳という年齢でも課長に成れない人が増えています。
もう年功序列の維持はできていない状態です。
年功序列ではないのに終身雇用を維持すると、収入の格差が広がり、子供が産めない家庭を増やし、少子化になるという悪循環を生むのです。
終身雇用が崩壊のメリットは給料は上がる
年功序列が維持できないのであれば、終身雇用は諦めるしかありません。
しかし終身雇用が壊れれば給料UPに繋がる、と考えています。
まず会社が給料を上げるための条件は、会社が利益を上げることです。
では、今の会社の利益は上がっているのでしょうか?
下記の表は会社の経常利益の統計になります。
経常利益とは会社の「本業で得た利益」と「本業以外利益(株や利息)」を含めた金額です。
20年前の平成9年には30兆円以下でしたが、平成29年には83兆円と3倍近くなっています。
あなたの給料は会社の利益に応じて上がっていますか?
ちなみに私の会社は上がっていません。
新卒の初任給は20年前も今もほとんど変わっていません。
その理由は労働組合が形だけになっているからです。
そもそも働く人が「給料を上げて下さい」と言って叶うのであれば誰も苦労はしません。
交渉に必要なのはカードです。
働く人に与えられた唯一のカードはストライキです。
ストライキとは、交渉に応じないときに集団で仕事を放棄する権利です。
このカードをチラつかせることによって、初めて交渉権が得られるのです。
2017年で半日以上ストライキした件数は38件です。
日本には法人企業は170万社あるので、0.002%ということになります。
35万社に1社の割合です。
このペースで進んだら35万年に1回の割合で「私の会社も半日以上のストライキをしたなぁ」と体験できる日が来るということになります。
これが日本の労働組合が「学芸会をしている」と言われてしまう理由です。
もうひとつ給料を上げる方法があります。
それは終身雇用を働く人が自分から放棄することです。
会社は新しい社員には目に見えない教育費を払っています。
私が先輩に「教えて下さい」と言えば、作業を止めて話を聞いてくれます。
この時間、先輩は仕事が進まず会社には利益が入っていない状態です。
これが毎日のようにあり、何年も続けば膨大な費用になります。
その費用を掛けた人材が退職されることは、会社には大きな痛手です。
これを食い止める手が終身雇用制度です。
終身雇用制度は働く人が作った制度ではなく会社が作った制度です。
会社は自由に制度設計できるのに、得がなければ「おかしい」と思いませんか?
終身雇用がなくなれば、会社は自分の会社に人材を留めようと策を講じます。
給料を上げたり働く環境を良くしないといけなくなります。
各会社が同じように考えれば、そこに競争が生まれます。
つまり終身雇用制度とは「働く人が安心できる制度」という側面があるものの、同時に「会社が人材確保のために競い合わない制度」とも言えるのです。
そのためには働く私達が終身雇用が成り立たないことに気づき、崩壊を望んでからその競争がスタートです。
あなたは終身雇用制度を希望しますか?