同一労働同一賃金で派遣・契約社員は不幸になる?

同一労働同一賃金という言葉をご存知でしょうか?

2018年に「働き改革法案」が可決され、その中に「同一労働同一賃金」が盛り込まれました。

この法律によって「派遣社員、契約社員、パートと正社員を比較して不合理な待遇差を禁止する」ようになります。
大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から施行されます。

不合理な待遇差とは差別のこと。
「差別はない方が良い世の中だ」と思うのは当然です。

しかし私はこの「同一賃金同一労働が、派遣や契約社員で働く人を不幸にする」と思っている。

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派遣・契約社員(非正規)と正社員の実態把握

まずは現状把握。

非正規で働く人はどれぐらいいるのだろう?

2017年では働く人全体の37%にあたる2,036万人が非正規社員になっている。

黄色:正規社員 :非正規社員)

正社員と非正規社員の人口割合

非正規と呼ばれる人が増えている理由は、労働者派遣法の歴史的な背景がある。

派遣法の歴史

労働者派遣法ができたのが1986年
今では違和感を覚える人も多いだろうが、この当時は派遣の方が給料が高い仕事がざらにあった。

例えばシステムエンジニアやプログラマーの仕事。
大きなシステムを受注したが、人手が足りない時に派遣を雇用して穴埋めをしていた。

もちろんシステム開発が終わり仕事がなかったら契約は解除されるが、その代わりに給料が高い。

そして仕事ができないと解除されるから高い能力も必要になる。

つまり昔の派遣は野球の助っ人外国人みたいなもので、「レフトを守れる長距離バッターがいないな」と思ったときに呼び出され、成績が良ければそのまま球団に残るが、ダメだったら解雇されるような存在だった。

その色が変わったのが1999年に行われた「対象業務の原則自由化」。

ここで一気に派遣で働く人が増える。

その後も約10年間、法律が緩和され続け、近年は規制の方向に向かっているが、根本的な解決ができずに現在でも派遣で働く人は増えている。

労働者派遣法の流れ

派遣と正社員の給料の差

問題は働く人の量ではなく、給料の差である。

2017年の「非正規の中でもフルタイムで働く人」と「正社員」の給料を比較すると下記のグラフのようになる。

正社員とフルタイム非正規の給料比較

男性の場合は1.5倍の差、女性では1.4倍の差があることが分かる。

更に大きな差を生むのがボーナス。
派遣や契約社員の人は、ボーナスがもらえない人がいる。

正社員と比較すると下記のような結果になる。

正社員とフルタイム非正規のボーナス比較

年間のボーナスの差は男性は4.3倍、女性は5.2倍の差がある。

これだけ見ても派遣や契約社員と正社員の待遇の差はとても大きい。
これは大きな問題だということで「同一労働・同一賃金」と声が大きくなる。

この給料の差が埋まるのであれば大賛成だが、実際にはそうならないと思っている。

すでに同一労働ではなくなってきている働き方

間違ってはいけないのが「同一労働・同一賃金」とは「正社員と非正規の給料の差をなくす」とは言っていない。

「同じ労働であれば、同じ給料にしましょう」と言っている。
前提として「同じ労働であれば」という言葉が付く。

はたして正社員と非正規は同じ働き方なのだろうか?

例えば工場の仕事。

例として図のように2つのラインがあったとする。

生産ラインの違い
ひとつは「生産開始した2年経過した製造ライン」。
もうひとつは「生産開始から間もない製造ライン」

この仕事を第三者が見ると「まったく同じ仕事」ように見える。

しかし実際の仕事内容は異なっている。

工場の生産は立ち上げた初期には、多くトラブルがある。
トラブルの内容は、品質の問題や機械のトラブルなど。

そのトラブルはデータとして蓄積され、改善を行うことで少しづつ安定していく。

生産のトラブルと時間

安定している生産ラインは「生産と管理する」のが仕事。

それに対して、まだトラブルが続く生産ラインは「問題に気づく発見力・故障の予知・トラブルデータの蓄積・問題の対応力」など普段の仕事に対して、より多くの仕事が求められる。

生産ラインの違いにより求められる能力

第三者には同じ仕事のように見えるだけで、実際には求められる知識や経験は違っている。

会社としては、少ない経験で対応できる仕事を派遣社員に、正社員には経験が増える仕事を割り当てたら、すでに同一労働とは言えなくなる。

更に正社員には、もっと多くの仕事を与えることで、働き方の難易度を変えることができる。例えば「改善提案」のノルマや「品質改善のグループ活動」など。

正社員には更に業務を与える

改善提案とは品質工場や効率改善やケガ防止する提案すること。

品質改善のグループ活動とは少人数で集まり、ひとりではできないような改善テーマを持って活動し、それを社員にプレゼンのように発表すること。

これらは簡単そうに思えて大きな業務負担になる。

こういったように正社員と派遣社員では、既に多くの会社が仕事内容に差を付けている。

そして会社は「同一労働ではないなら、同一賃金にする必要がない」と考えるだろう。

これは工場の仕事が特別なわけではなく他の仕事も同じ。
事務も専門的な仕事も多くの場合は、すでに派遣と正社員は与えられる負荷が違っている。

もし現在、同じ仕事をしていても同一賃金・同一労働がスタートした時点で、仕事内容に差を付けるのは簡単なことである。

昔の派遣は同一労働だった幸せ

15年以上前の話しだが、私が初めて就職した会社は派遣会社だった。
派遣の仕事が広がったばかりで「派遣ってなに?」とよく分からないまま就職した。

それは会社側も同じで「派遣の人をどう教育したら良いの?」と扱い方が分かっていなかった。

だから正社員と同じ仕事を任され、同じように怒られた。
つまり「同一労働」だった。

その当時の給料は手取りで14万円。
同世代の正社員の手取りは22万円。

同じ働き方なのに給料は7万円の差。

そして待遇面の差も大きかった。

正社員は残業規制があり20時間が限度。
派遣は残業規制がなく50時間ぐらいの残業があった。

当時はこれに腹を立てた。
「なぜ同じ働き方をしているのに待遇も給料もこんなに違うのか?」と。

転職したときに気づく「同一労働」のありがたさ

2年後に派遣の会社を退職した。
まだまだ就職難と言われてるときで求人倍率は0.6~0.7程度。
仕事を求めてる人の3~4割には仕事がない状態。

その面接先で多く言われた言葉。
それは「前の会社は派遣ですか?派遣ではどんな仕事をしていましたか?」という言葉。

その言葉の裏には「大した仕事の経験がないのであれば不採用です」だと思った。

しかし私は自信を持って答えることができた。
「はい。派遣でした。しかし正社員と全く変わらない業務を任されていました。例えば・・・」

これは仕事内容が同じだった事と、正社員の人たちより多くの残業し多くの仕事を任された事が自信になった。

この返事ができなかったら私は不採用だったと思う。

つまり同一労働・非同一待遇だったことに救われたのである。

同一労働・同一賃金がスタートすると仕事の差が更に大きくなる可能性がある。
経験が積めない働き方をしていたら、転職は難しくなっていく。

一番必要なのは「同一労働、同一リストラ」だ

もし、仮に派遣や契約社員と正社員が同じ仕事を与えられたとする。
その場合、同じ給料にしないといけない。

しかしそれで差別がないのだろうか?と思う。

今まで勤めてきた会社が傾いたことがあった。
リーマンショックや震災で仕事が止まった期間もあった。

そんなとき、優先的に解雇されたのは派遣や契約社員の人たち。

その時、私は転職していて正社員として雇用されていたから解雇されることはなかった。

しかし「なぜベテランの派遣の人より、教わる側の私が残るのだろう」というのが疑問だった。

会社にはリストラがあり解雇する優先順位がある以上、正社員と非正規では給料には変えられない大きな差がある。

必要なことは「同一労働同一賃金」ではなく、「同一労働・同一リストラ」ではないだろうか?

正社員を狙うなら今

派遣や契約社員の仕事が悪いのか?と言われたら、そうとも言えない。

友人にはずっと派遣で働いている人もいる。
その友人は1年のうち8ヶ月しか働かず、残りは雪山に行ってスノーボードをやる、という生活を送っている。

このように派遣という働き方を上手く利用している人もいる。

しかし正社員を狙っている人は今がチャンスといえる。

その理由のひとつは同一賃金・同一労働に期待をして待機している人がいること。
そして求人倍率はここ1、2年で異常に高くなっていること。

2018年はバブル期よりも求人倍率は高くなっている。

2018年の求人倍率

(求人倍率のグラフ)

この求人倍率が高まっている理由は、景気などの理由ではなく、定年を迎えて退職者が増えているからである。

下記のグラフは2017年の人口を表したもの。
「近年退職した世代」と「近年働き始めた世代」を比較すると1.5倍ぐらいの差があることが分かる。

2017年の人口統計からみた退職する人の多さ

新卒が入社する人数に対して、定年を迎える人がかなり多い。
会社は現状の社員数を維持するために、新しい人を補充しようとして求人を出している。

そして会社、派遣社員が多い世代は現在45歳以下の人。

45歳以上の人は派遣法が緩和される前の世代であり、正社員として雇用されている人がほとんど。

派遣が多い世代と少ない世代

つまり会社には正社員が減り、正社員の求人がようやく伸びている状態。

しかし現在のような求人場率が状態がいつまで続くか分からない。
少なくても東京オリンピックで雇用されている人がいて、その人達はオリンピックが終わると解雇される人が多いだろう。

そうすると求職者が増えるため求人倍率が下がる。

おそらく2019年の半ばまでは、求人倍率が高い状態が続く。
「その間までが勝負」と派遣で働いている友人に伝えている。

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