生産性とは何か?世界に比べ低い日本はなまけもの?図解

日本人は生産性が低いと言われている。
海外の働き方を詳しく知らない私たちは「きっとそうなんだろう」と思ってしまいますよね。

下記のグラフは就業者1人当りの労働生産性を先進7カ国で比較したもの。
濃い青が日本)

世界と比較した日本の労働生産性の順位

こうやって比較してみると日本はここ20年ぐらいずっとビリ。
もっとも生産性が低いのが日本ということになる。

ということは、日本人は他の国の人達に比べて怠け者なんだろうか?
日本人は働き者と聞いたことがあるが、間違っていたのだろうか・・・。

今回は

  • 労働生産性となにか?
  • どうすれば生産性が上がるのか?
  • 日本が生産性が低い本当の理由

について書いていくよ。

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そもそも生産性とは何?誰でも分かる生産性の求め方

よく使われている「労働生産性」という言葉。
この言葉はどんな意味だろう。

労働生産性の計算式は下記のようになっている。

労働生産性の計算式

労働生産性とは「労働による付加価値」を「働く人の人数 ro 働く時間」で割ったもの。

付加価値という難しい言葉が出てきましたね。

とりあえず付加価値は一度おいといて、労働生産数を上げるための条件は

  • 分子の「労働による付加価値」を上げる
  • 分母の「働く人の人数 ro 働く時間」を下げる

このどちらかになります。

付加価値とは何だ?【分かりやすく図解】

付加価値とはなんだろう?

付加価値は下記の計算式になっています。

付加価値額=人件費+賃借料+租税公課+減価償却費+営業利益

なんだかよく変わらない言葉が並んでいます。

簡単に考えるため例で図解して考えてみましょう。

あなたは漁師さんから魚を買いました。
魚と運んでもらった代金を含めて1000円でした。

材料費(原価)

あなたはその魚をさばきます。
魚をさばくには、あなたの人件費が500円かかります。

人件費

魚をさばくには包丁やまな板が必要になり、購入するのに10万円掛かりました。
この包丁とまな板は1000回使えるとします。
一回使うことに100円かかります。

10万円÷ 1000回 =100円(減価償却費)

減価償却費

あなたは1匹の魚から、切り身が4切れ取れました。
1切れ500円で売れたので売上は2000円。

売上

利益を求めると400円になり、計算式は下記のようになります。

利益の計算

売上から掛かった費用を引くと利益になります。

今回の例でいうと右側の3つにある、減価償却費、人件費、利益の3つを足したものが、付加価値と呼ばれています。

経費や利益の付加価値部分

ちょっと分かりにくいですね。
分かりやすくするために、付加価値を計算式に右側に持ってきたら下記のようになります。

付加価値の計算式

式がすっきりしまいた。
式の右側は付加価値となります。

では式の左側は?
そうです、右と左がイコールになっているので、左側も付加価値になります。

この左側の式を「控除法による付加価値」と呼びます。
売上から材料費(原価)を引くと、付加価値になります。
魚を買って切ることによって、新たな価値が生まれたということですね。

右側を「加算法による付加価値」と呼びます。

控除法と加算法で求めた付加価値

どっちの計算で求めても結果は同じだということが分かります。

また、国内で行われた全部の付加価値を足したものをGDP(国内総生産)と呼んだりします。

何を上げれば生産性は上がるのか?

もう一度、労働生産性の式を整理してみましょう。
下記の図は、付加価値を加算法で計算した生産性の式です。

加算法による労働生産性の計算式

何を変化させれば、労働生産性は高くなるのでしょう。

例えば人件費を上げた場合どうなるのか?
試しに人件費を500円から600円に上げてみます。

加算法による労働生産性の計算式(変更1)

人件費を上げると利益が300円になります。
付加価値は変わらないので生産性も変わりません。

長持ちする良い包丁やまな板に変えて、減価償却費を下げてみましょう。

減価償却を下げても利益が増えるだけで、これも生産性は変わりません。

ここから何が言えるでしょう?

  • 会社が儲かった=生産性が上がったとは言えない
  • 給料が上がった=生産性が上がったとは言えない

となります。

つまり「会社内のお金をどこに割り振っても生産性に影響することはない」ってことです。

次に付加価値の部分を減算法で表した付加価値の式を見て下さい。
付加価値を上げるためにはどうすれば良いでしょうか?

簡単ですね。

生産性を上げるためには方法は、購入する材料費を下げること。
つまり漁師さんから値切って安く買うことです。

もうひとつは売上を上げること。
売上を上げるためには「単価を上げる」か「売る数量を増やす」のどちらかです。

但し、売る数量を上げると、同時に購入する材料の数量も上がりますので、売上が倍でも生産性が倍にはならない、という点は注意が必要ですね。

付加価値の部分で重要なのは、「会社が支払うお金」と「入ってくるお金」の差で決まるということです。

効率を上げれば付加価値は上がるのか?問題

「お前らは仕事の生産性が低い。もっと効率を上げろ」なんて言葉を上司から言われたことはありませんか?

次に作業効率と生産性の関係です。

下記のグラフは職種別に生産性を比較したグラフ。
これを見ると職種によって生産性は何倍も違うことが分かります。

産業別労働生産性

このグラフを見ると「不動産業」と「宿泊・飲食サービス業」では10倍以上の差があることが分かります。

「宿泊・飲食サービス業」の人達は、「不動産業」の人と比べて10倍ほど効率が悪い仕事をしているのでしょうか?

友人に飲食店で働いている人がいますが、足に湿布を貼って動き回って大変な仕事なんだろう、なんて思います。

そもそも、効率と生産性の関係はあるのでしょうか?

また魚に例えてみます。

一時間あたりに魚を1匹しかさばけない人が、工夫して2匹さばけ8切れ作れるようになったとします。
作業効率は単純に倍になったということですね。

倍を数を作れば売上も倍になるはず・・・と言いたいところですが、8切れ作っても売れるのでしょうか?

主婦の皆さんは「今日はお魚が良いかな?お肉かな?それとも野菜?」と考えているわけです。
そうするとその土地ある魚の需要というのは決まってしまいます。
そこに倍の供給をするわけです。

需要と供給にギャップができてしまいます。

需要と供給

需要がないのに供給ばかり高めても売れないですよね。
売れなかったら生産性は上がりません。

効率を上げて作る量を増やせば生産性が上がるわけではなく、売り上げた量(額)が生産性に影響します。

ましてや魚は足が早く腐りやすいので、売れなかたら捨てるしかありません。
逆に材料費だけが倍になり、生産性は下がります。

残された生産性の向上は、余った時間の有効活用です。
1時間の仕事を30分で終わらせ、余った30分で別の仕事を行います。

この時間を使って売上向上や購入費削減をしないと生産性に影響は与えられません。

商品のニーズが一定であれば売上は変わらないでしょう。
また、購入費も相場があり大量購入でもしないと下げることも難しい。

こういう状況にある仕事は、効率を上げても生産性に影響を与えられないということです。

これは飲食業や販売業でも同じ事が言えます。

どれだけ料理を早く作り提供できても、お客さんの人数が増えないと生産性は上がりません。
1時間に100人のレジ打ちできる早い熟練者がいても、お客さんが来なかったら生産性は同じです。

生産性とは作業効率を上げて量を増やせば上がるものではなく、それが売れた時に生産性が上げることができるのです。

ものづくりの生産性

では腐らないモノではどうでしょうか?

例えばネジです。
ネジは防錆処理をしっかりしていれば錆びたりしません。
ネジは多く作ってもいずれ売れるでしょう。

ネジの製造は長い棒を素材にして、転造加工やヘッダー加工と呼ばれる工法でネジの形にしてきます。

ネジの利益の関係は下記のようになります。
(値段は分かりやすくするため、お魚の例と同じにします)

ものづくりの利益

1時間当たり5個しかネジが作れなかった人が、効率を上げて10個作れるようになったとします。

それが全て売れた場合、売上は2倍になり利益は3.3倍になりました。
ものづくりの利益(生産数の変化)

しかしここで問題が発生します。
会社はネジを保管するため倉庫が必要になります。
倉庫を借りるためには費用がかかります。

倉庫を借りる家賃が月に72万円と仮定します。
月に30日と考えると一日当たりの家賃は2万4千円です。
一日は24時間なので1時間当りの家賃は1000円になります。

そうすると会社の利益は・・・・。
ものづくりの利益(倉庫費用)

倉庫が1000円かかってしまったら、会社の利益は減ってしまいました。

ネジの倉庫でそんなに高いの?という疑問がありますよね。
たしかにネジは小さいので、何万個あっても大したスペースは必要ありません。

しかし自動車の部品だったら?
冷蔵庫の部品だったら?
それが何百種類の部品もあったら?

そう考えると、大きな土地に大きな倉庫が必要になります。

現在のものづくり業界では、どこの会社も「在庫を持つな」とことが合言葉のように使われています。

この理由は品質の問題もあります。
多すぎる在庫は管理も増えますし、悪い環境で保管すると劣化するリスクを抱えています。

しかし在庫を減らす一番の目的はコストです。

日本は土地代が高く、在庫を抱えることは利益を圧迫する要因になっています。

しかし在庫に余裕がない場合は、急な注文やトラブルがあった場合は対応しなくはいけません。
作るためには段取りを整える時間が必要であり、これが生産性を落とす要因ひとつになっています。

生産性が上がっても別の費用が発生する場合があり、利益が増えるとは限らない、ということです。

コンビニのムダな廃棄弁当と生産性の関係

次はムダと生産性の関係です。

コンビニでムダになっているのは、お弁当やおにぎりの廃棄。
友人がコンビニの店長をしているのですが、一日に15個ぐらいお弁当を廃棄しているそうです。

もったいないですよね。

コンビニは全国に5万5千店舗あります。
どこのコンビニも同じ廃棄量と考えると、一日に82万5千食のお弁当が捨てられることになります。

たくさんのお弁当を仕入れたのに、売れる量が少なかったら生産性は低下しています。

しかし、あなたは品揃えが悪いコンビニに行きますか?

私は地方都市に住んでいますが、歩いて行ける範囲にコンビニが3件あります。
車で5分以内のところには8件あります。

私だったら品数が多いお店を選びます。
ナポリタンを買いに行ったのに売り切れだったら、別のコンビニに行くこともあります。
それが2,3回続いたら、そのコンビニには行かなくなるでしょう。

お弁当を捨てることはムダであり、生産性の低下ですが、お客さんが来ないのも生産性の低下です。

なぜこんなに生産性が悪いことをするのでしょうか?

今のコンビニは全ての商品がデータで管理され、どうすれば売上が最大化できるか知っています。
他社に勝つために日々努力をしています。

つまり、お弁当を廃棄するムダを作った方が、お客さんが増え生産性が上がるのです。

私たちが考えているムダとはちょっと違いますね。
もちろん倫理的に「食べ物を捨てて良いの?」という問題はあります。
「残さず食べなさい」と怒られて育ったので抵抗があります。

コンビニも世間からの声も聞こえているでしょう。

しかし競争の中に会社がある以上、他社より多くのお客さんを呼ぶ必要があります。

そのためのサービスが品揃えです。
つまりムダを作りサービスを向上させることで、生産性が高まることもある、ということです。

また似たようなムダは農業にもあります。

農家は作った野菜をトラクター等で潰して捨てる事があります。
作る費用を使って、売らずに捨てるのだから生産性は下がっています。

しかし豊作で野菜の値段が下がりすぎると、輸送費や梱包費を差し引くと赤字なってしまうのです。

ムダだと思われる農作物の廃棄することで、市場価格を操作し利益が生まれるように考えているわけですね。

結局、生産性はどう使えば良い?経営者からみた生産性

生産性とはなんだ?
なんだか混乱して来ましたね。

では、経営者の目線では生産性とはどう見えるでしょうか?

もう一度、生産性の計算式を出します。

労働生産性(控除法)

この計算式の分子の「売上-材料費(原価)」は付加価値と言いましたが粗利とも呼ばれます。
粗利にはいろんな言い方があり「限界利益」「売上総利益」も同意語として使われています。

限界利益と呼ばれる理由は、人件費や減価償却費を頑張って減らしても、限界の利益はここですよって意味ですね。

これを「時間(日数)」や「働く人の人数」で割った数字が生産性と呼ばれています。

これを経営者が見ると「従業員の一人に対していくら稼げているのか?」という簡易的な指標になるわけです。

そこから会社に必要な設備費(減価償却費)や会社の利益を差し引いた金額を人件費に割り当てているわけです。

もし従業員の1年間の生産性が500万円であれば、年収が500万円になることはありません。
例え仕事で使う道具や設備がゼロ円の会社でも、会社の利益が無くなってしまいます。

私の会社では「うちは人手不足だから新人が欲しい」と不満を漏らす人がいます。
これは経営者から見ると「生産性が上がっていないのに人を増やすと、一人あたりの生産性が落ちる。つまり給料減らしていいの?」と思うわけです。

設備投資が必要な額は業種によって違いますが、おおよそ年収の2倍や3倍の生産性がないと会社は赤字経営になってしまいます。

「粗利が高い」と「給料が高い」は必ずしもイコールにはなりませんが、生産性が上がらないと給料を上げる余地が残っていないということです。

飽和している産業の生産性の向上とは?

よくニュースで「IT技術を使って生産性を上げよう」なんて言葉を耳にします。
 
一見「生産性は高い方が良いに決まっている」と思ってしまいますが本当にそうでしょうか?
 
例えば5人の事務員が一日に50枚の資料を作ったとします。
そこにTI技術を導入して60枚作れるようになりました。
 
効率は20%も上がったということですね。
 
これで生産性を上げるためには
  1. 売上を上げる
  2. 外部からの購入費を下げる
  3. 人を解雇して5人から4人にする
このうちのどれかです。
 
日本の多くの市場は飽和しています。
例えば自動車が売れる台数は長年の間横ばい状態です。
自動車の国内需要(販売台数)
 
 
売れる台数が一定で売上を伸ばすには「価格を上げる」か「他社のシェアを取る」しか方法がありません。
 
しかし価格を上げると購入者は、他の会社から自動車を買うでしょう。
そして「他社のシェアを取る」というは、どこの会社も同じことを考えるので拮抗します。
 
こういう産業で生産性を上げるには、効率を上げて人を解雇するしかないのです。

先程、生産性が上がらないと給料も上がる余地がない、と言いましたが、飽和している産業では生産性が上がると雇用は失われていくのです。
 
これが働く私たちにとっての悩みどころです。
 
私はある製造ラインを自動化しました。
生産性は大きく向上しまいた。
自動化により他社との価格競争にも勝てましたし、会社の利益も増えました。
 
しかしそこで働いていた人は解雇されてしまったのですね。
そのとき「働く人にとって生産性の向上は手放しで喜んで良いのだろうか」なんて思ったのです。
 
生産性の向上は経営者にとっては良いことです。
しかし働く人にとっては良い部分も悪い部分もあります。
 
※自動車を例として出しましたが、自動車産業は海外に売ることも出来るので、実際には雇用を解雇以外にも生産性を上げる手段はあります。しかし国内しか需要が求められず飽和している産業もあります。
 

日本の生産性が低い原因

日本では年功序列の会社がたくさんあります。
若い人は給料が低く、歳を取ればおのずと給料はあがります。

しかし今は少子高齢化です。
今後は更に進み2045年まで続くと言われています。

会社内でも若い人は減り、高年齢の人が増えています。

はたして今までのように給料を払い続けられるのでしょうか?

それは生産性が高い会社は払える余地があります。
生産性が低い会社は、給料を上げたくても上げられません。

そして生産性は業種によって大きく違います。
生産性は魚屋さんの例を見ても分かるように、個人が頑張って作業効率を上げてもお客さんの買う量と値段が一定であれば付加価値は増えません。

仕事である以上、物を買う人、サービスを受けたい人のニーズがあるからこそ成り立ちます。
ニーズが高ければ高く売ることも量を売ることもできます。

そして働く人にとっては、生産性を上げても給料に反映されなかったら意味がありません。
経営者には生産性という指標は必要ですが、働く人は気にする必要がないのです。

働く人に大切なのは「どれだけの時間でどれだけ稼ぐことができるのか?」という指標です。
つまり賃金生産性です。

賃金生産性

賃金生産性というと難しく聞こえますが時給ってやつですね。
大切なのは月給でも年収でもなく時給です。

海外と差があるとすれば、この時給への意識の差だと思います。

日本では終身雇用・年功序列の歴史があるため、業種間の転職が多くありません。
時給が高い業界、もしくは今後高まる業界へ人の移動が少ないという特徴があります。

生産性が高い会社、つまりニーズがある業種に行くことは、仕事を選ぶときに重要になります。
これはお金の話しだけではありません。

短時間で給料が稼げれば残業する人も減るでしょう。
ワークライフバランスも良くなるでしょう。

今の日本の労働環境で抱えてる問題は良い方向に向かうはずです。

これが本当の働き方改革だと思いますし、これしか方法がないだろうとも思います。

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