ここでは、会社の後輩が退職に至るまでの経緯を書いていくよ。
ちょっと愚痴っぽく、特定の職業を批判してしまうから、気分が悪い人は見ないでほしい。
おれがまだ20台後半の頃。ものづくり系の会社に勤めていた。
入社して3年経過し、ようやく仕事が回せるようになっていた。
そんなある日に新人の部署配属が決まり、おれの部署にも一人の新卒が来た。
大卒で23歳の宇田という名の男。
大きな会社ではなかったから、係長ぐらいまでは普通に実務を回していた。
そんな都合があって、おれが実務の教育係のようなポジションになった。
最初の宇田の印象は「やる気を感じない」「知識が乏しい」「まだ仕事をアルバイトと同じ感覚なのか?」という印象のだったよ。
案の定、上司からは怒られることが多かった。
最初のスタートダッシュは大切だと思ったから、会社で分からないことは家に帰って猛勉強して次の日に成果を出すを繰り返した方がいいだろうなっ、と思っていた。
けど、それは個人の自由であって強制することは出来ないから「おれが入ったばかりの頃は、そうしてたよ」なんて、やさしく助言していたつもり。
その甲斐があってか、普通の人より覚えは悪かったけど、宇田なりに頑張っていた。
最初はぜんぜん出来なくて怒られることも多く、暗い顔しているときもあったけど、こっそり「最近ちょっと仕事が分かってきて、少し楽しくなってきた」と言っていた。
ただ、性格の問題だと思うけど、お客の前では緊張してぜんぜんダメだった。
電話でいろいろ突っ込まれ、受話器持ったまま黙ってしまうこともあった。
自分に自信がなくて、下手なこと言ったら責任問題になる、と感じていたんだろうね。
でも、これは相手と対等に話せるぐらい知識を付けて、場数をこなすしかない。
大きな会社じゃないんだから、自分で仕事を盗んでやるしかない。
産業カウンセラーに本音を話したらどうなるのか?
そんな時に社員全員に対してストレスチェックのアンケートが実施された。
後で知ったのだが、そのアンケート結果が良くない人は、産業カウンセラーという人と個人面談があると言う。
部内でアンケート結果が悪いのは、おれと宇田の2人だった。
カウンセリングの先生は「仕事の悩みはありませんか?」「メンタルがダメになる病気があるから、なんでも相談してほしい」と言ってたが、おれは仕事が忙しく適当に受け答えして早めに抜けだした。
面接が終わった2週間後、部内で飲み会があり参加した。
宇田は欠席。
みんなが酔っ払ったころ、部長がこんなことを言い始めた。
「実はさぁ。こないだメンタルに関する面接があってさぁ。宇田が面接を受けたんだけど、カウンセラーの先生が『仕事はどうですか?』っていろいろ聞いたら、『実はぼく・・・洋服屋で働いてみたいです・・・』って言ったらしいのよ。笑っちゃってさー」
そこからは宇田の話しで盛り上がり、みんなで笑っていたよ。
おれは腹が立った。
カウンセラーが話した内容を酒のつまみにする部長の人格より、産業カウンセラーの実態に。
産業カウンセラーに相談したことは、全て会社側に筒抜け。
宇田はカウンセリングの先生に自分が抱える仕事の悩みを正直に打ち明けたんだろう。
それから3ヶ月。
宇田は自分が希望していない部署に飛ばされた。
部長は「お客の前に出すべき人材じゃない」と判断したんだろう。
お客の前に出るということは、その会社の顔になるということ。
会社側から見れば正しい判断なんだろう・・・。
うつ病っぽくなってしまって、その半年後には宇田は会社を退職したよ。
産業カウンセラーはいったい誰から金を貰っているのか?
産業カウンセラーは誰に選ばれて、誰から金を貰っているのか?を考えれば、誰の味方するかは分かる。
ただ、医者とかカウンセラーの名の付く職業の人は、そんなことはないだろうと思っていた。
会社側に伝えるとしても「○○さんは仕事でメンタルが滅入っていますから、会社側も気をつけて下さい」程度だと思っていた。
産業カウンセラーはレポートにして、オブラートなしで会社に伝えていたよ。
どんな産業カウンセラーを雇うかは自由です。
その産業カウンセラーが空気を読んで、今後も顧問契約して欲しかったらどんな行動をしますか?
そんな単純なことも気付けなかった。
おれが気付き、宇田に一言伝えることができれば、退職することはなかっただろう。
少なくても自分のタイミングで退職することが出来たと思う。
産業カウンセラーという職業を信じていた自分が情けない。
何がしたくてその職業についたのか?いったい誰の方向を見て仕事をしているのか?
「何がしたくてその職業に付くのか?」「誰の方向見て仕事がしたいか?」
これって志望動機なんだよね。
「ライバル会社より良い物を作ってユーザーに届けたい」でも「困っている人のチカラになりたい」でも素晴らしいと思う。
もちろん仕事の根本は、金を稼ぐひとつの手段。
ただ、いろんな職業を見渡すと「金を稼ぎたいだけなら、もっと能率のいい仕事あるよ」と思う仕事ばかりだよ。
ということは、みんな金だけじゃなくて、別のファクターでその仕事を見ているんだろう。
それを志望の動機として履歴書や職務経歴書に書くんだ。
おれも仕事をやってるうちに自分の志望動機を忘れることがある。
だからたまに思い出して判断に迷ったときに、しがみ付くようにしている。
転職に迷う時は特にね。
出会った産業カウンセラーも志望動機や最初の志は高いものだったと思う。
専門性が高い仕事ほど、動機は強いはずなんだ。
どこかで歯車が狂って商業主義になり、困っている社員じゃなく、雇い主の顔色を見るようになったんだろう。
おかけでそのカウンセラーは10人ぐらい人を雇い、多くの大手企業と顧問契約を結んでいるよ。
おれはそのカウンセラーに宇田の言葉を伝えてあげたいよ。
「なにが『なんでも話してほしい』だよ。天使の面した悪魔じゃないですか。悪魔なら悪魔の面してろ」ってね。
これが体験した産業カウンセラーの実態。
それからストレスチェックのアンケートには、無難な真ん中にしかチェックを付けなくしたし、面談があっても本音を話せるフランクな関係ではなく、緊張感を持って対峙する業務として考えるようになったよ。
社会に出て日が浅い若い人には、宇田の犠牲を何かの役に立ててもらえれば。
まとめ
- 会社が雇う産業カウンセラーや第三者相談機関は、会社の一部の構造に既に組み込まれている。
- あなたが本音で仕事の相談していい相手は、あなたが雇う弁護士。もしくは利害関係がなくても付き合ってくれる人。つまり友達や家族です。
- 転職を考えたり仕事に迷うときは、自分の志望動機を思い出せ。
こんなこと書いて、産業カウンセラーの人が見たら「そんな人ばかりじゃない」とか「失礼だ」なんて言われるかな。
ただ、これはおれが経験した事実であることは間違いないよ。
それと産業カウンセラーを本当にやりたいなら教材なんか置いて、まず自分がその産業に飛び込んで働いて、会社の実態や現実を肌で感じた方がいいと思う。
おれと一緒に油にまみれて、爪の中を汚くする気はあるのかい?