一般的には転職回数が増えると、次の転職が不利になる。
これは「転職回数が多い=長続きしない人」というイメージが付くのが原因。
どんな会社でも離職率は低くしたい。
しかし、転職することでスキルや経験が増えているのであれば、それは会社にとって魅力的な人材になる。
転職会社は不利ではあるが、カバーできてしまえば関係なくなってしまう。
そうしやすい職業のひとつが機械設計エンジニア。
機械設計は覚える事が多く、会社を変えないと覚えられないことがある。
機械設計エンジニアに必要な知識
機械設計の仕事は図面を作ること。
色々な仕事はあっても最終的には、良い図面を作ることに集約される。
「会社の設計レベルは図面を見れば分かる」と言われるほど。
設計に必要な知識は、ざっと並べただけでもこれだけある。
この全ての知識がないと設計が出来ないわけではないが「知識の幅は設計の幅」と言われている。知らないと「設計として出来ること」が減ってしまう。
この中には本で学べる知識もある。
例えば力学系は学問なので、個人の努力で勉強することが出来る。
ただ、どうしても会社に入らないと難しいのが成形の知識。
成形の知識は本で学ぶには限界がある
成形に関する本はたくさんある。
ネットの情報もあるにはある。
しかし本やネットで学べるのは成形の原理や特性程度。
原理は大切なのだが、設計にとって同じぐらい大切なのは、その成形はどこまで無理が効くのか?という設計自由度。
例えば直径2mm、穴の公差はいくつが限界か?とか。
成形トラブルが起きない限界の形状は?など。
これらは材料や成形方法でも大きく異なる。
こういった成形の限界を知るためには、何度も成形現場に立たないとなかなか分からない。
ものづくりの会社の基本は製造
ものづくりの会社の多くは、製造を行う会社。
元請け会社から図面をもらって、それに沿い製造する。
そこから手を広げようと思う会社は、組み立てを受注するようになる。
更に手を広げる会社は設計も請け負うようになる。
製造が出発点であり、得意な成形があるから会社として成長できた。
問題はこの得意分野があること。
例えばアルミ鋳造でスタートした会社はプレス品は作っていない。
2つの成形を高いレベルで行えている会社ほとんどない。
働く側の目線に立つと、アルミ鋳造を行っている会社に勤めれば、その成形の深いところまで学べる機会があるが、他の成形については学べるチャンスがない。
唯一あるのは外注企業から情報。
しかし外注企業はノウハウに関わることは教えられないし、下手げなことを口にすると、キツイ要求されるので本当の事は言わないよ、よっぽど人間関係が出来ていない限りは。
つまり1社で勤めている限り、成形を学ぶには限界でてしまう。
設計の仕事とは生産技術者との戦いでもある
ものづくりの仕事には生産技術者と呼ばれる仕事がある。
生産技術は成形について判断する仕事であり、安定した品質でコストを抑えられる方法を考える仕事。
つまり成形に関してのプロ。
この生産技術者は設計と対立しているケースが多い・・・というかほとんど。
設計とは仕様を満足させつつ、もっと良くしようとするのが仕事。
この「もっと良く」というのは、生産技術者にとっては負担になる。
特に中小企業の生産技術者は、無理な要望を受けトラブルになると土日返上したり、徹夜までする人もいる。
生産技術者から見ると「設計は図面を描いているだけ」という風に見られ「キツイ仕事ばかり押し付けて、そんなに言うならお前がやれよ」となる。
逆に設計から見ると「進化させ良い製品を作るから飯が食えている、周りを見ろよ停滞してたら会社が潰れるぞ」と反発する。
ここまでストレートな言い合いは多くないが、心の内側はこんな感じ。
本来は同じ会社の仲間なのだが、立場の違いにより争ってしまう。
こんなときに説得する材料になるのが成形の知識。
生産技術者に「こいつ、なかなか知ってる」と思われると仕事がスムーズになる。
設計エンジニアにとって魅力な会社とは
もし機械設計エンジニアの人で転職を考えているならオススメしたいこと。
それは設計と工場が同じ場所である会社に勤めること。
製造現場が近いとそれだけ足を運ぶ機会が増えるので、知れることが多くなる。
多くの知識が得られれば、もし次に転職しようと思ったときに有利になる。
問題は大手企業になるほど設計と製造は遠く離れた場所にあること。
ものづくりの会社はメーカーに近づくと製品知識は得られるが、製造に関わる知識は乏しくなってしまう。
大手企業が安定した雇用と言えなくなっているが、ボーナスは高い等の待遇面が良いのは事実。
逆に中小企業には設計の職場と工場が併設している会社も多く、製造に関して学べるが、待遇は見劣りする。
このどちらかを選ぶか?
この選択は本当に難しい。
どちらが正解とは言えないが、個人的にはもし会社を退職することになったとき、また新しい会社に転職できる力を得た方が良いと思っている。
自分は絶対にリストラされないとも言い切れないし、10年後の未来は誰も分からないのだから。
少なくても”設計エンジニアとして、製造と近い会社はそれだけで大きな魅力”というのことだけは覚えておいて、会社選びの参考にしてほしい。