求人を見ると「総合職」「一般職」という言葉を見かける。
最近「総合職と一般職の両方で募集があるが、どちらを選択しようか迷っている」という相談を受けた。
皆さんはこの「総合職」と「一般職」の違いをご存知でしょうか?
呼び名は沢山あり、
総合職・・・全国型社員、全国採用、キャリア幹部候補、
一般職・・・地域社員、エリア社員、エリア採用
など言われる。
この言い方は会社によって違い、特に転職のときは注意が必要。
一般的に言われてる「総合職、一般職とは何か?」は、こんな意味。
- 総合職とは会社において、総合的な判断を要する業務に取り組む職
- 一般職とは会社において、定型的な一般的な業務を取り組む職
皆さんはこの文章を読んでピンと来ますか?
「総合的な判断ってなに?」「定型的な業務ってなに?」って思いません?
文章がよく分からないのは、建前だからです。
建前なしで学生にも分かるような言葉で説明すると
- 総合職とは転勤を命じられ、その代償として給料が多く貰える職
- 一般職とは転勤がない、もしくは拒否できるが、その代償として給料が低く抑えられる職
と伝える。
ここでひとつ疑問が湧く。
それは「総合職と一般職では仕事内容ってどれぐらい違うの?」という疑問。
もちろん全ての会社が同じとは言えないが、少なくても自分が知っている会社は「総合職と一般職で仕事の内容が明確に違う会社はない」と答える。
会社によっては、誰が一般職で誰が総合職かも社員でも区別がつかないよ。
「え?あの人って一般職だったの?」というのはよくある話。
そして総合職だから仕事が多いとか、責任が重いとかもない。
会社からすると高い給料の総合職に頑張ってもらいたいのだが、そう上手くいかない理由がある。
会社は総合職に責任を与えたいが与えられない理由
「仕事内容が同じなのに給料が違うっておかしくない?」って思う人もいるだろう。
会社も総合職に責任ある仕事を任せたいというのが本音。
しかしそれが出来なのも現実。
ここでひとつ問題。
Q、あなたは色んな部署と連携して進める業務を担当しています。
仕事は毎日忙しく残業も多くあります。
そこに難しい業務が舞い込んできたので、あなたは隣の部署に相談しながら進めようと考えました。
相談相手はA・Bのどちらにしますか?
A、仕事の進み悪い事は承知の上で、自分が深夜残業したとしても、仕事ができない総合職に相談する。
B、スムーズに仕事を進めるために、仕事ができる一般職に相談する。
もうひとつ問題。
Q、あなたは上司であり大きなプロジェクトを進めています。
納期通りに成果を上げないと会社に与える損失は大きなものです。そこで大きなトラブルを発見しました。
あなたはどちらの部下に仕事を依頼しますか?
A、会社に損失を与えても責任が重い仕事だから、仕事のできない総合職。
B、会社の損失・お客様への影響・自分の出世を考慮して、仕事のできる一般職。
どちらを選択しましたか?
ほとんどの人は「B」を選択するだろう。
「総合職は仕事ができない」って意味ではないよ。
「総合職や一般職という肩書で、仕事の出来不出来は影響しない」ってこと。
仕事は仕事ができる人に集まる。
責任が重い仕事も仕事ができる人に集中する。
これはどこの会社でも同じ。
困った時に頼る相手は、解決できそうな人を選択するのは自然なことで、それが仕事であってもプライベートでも変わりはない。
だから総合職と一般職に「仕事の量」や「責任の重さ」に差があるのではなく「その個人が仕事ができるかどうか」の差になる。
しかし給料には差がある。
求人を見て悩む人は「給料は実際にどれぐらい差があるのか?」ってことだろう。
では、総合職と一般職の給料の差を見てみよう。
総合職と一般職の給料の差は結構えぐい
下記のグラフは総合職と一般職の給料の差。
「総合職の給料を100とした時に、一般職の給料の何%なのか?」というアンケート。
(2013年:厚生労働省の企業アンケート:回答数792社)
これは統計データではなくアンケート結果だから参考値と考えてほしい。
結果を見ると約3割の会社が「一般職の給料は総合職の80~90%」と回答している。
分かりやすく例として「総合職の賃金が30万円だった場合、一般職はいくらになるか?」で当てはめたグラフが下記。
3割の会社が「総合職が30万円だった場合は一般職の給料は24万~27万円」になる。
そして21万円以下の会社も12.6%存在している。
この結果はアンケートだから精度が心配だったが、私が知っている会社の相場と比較すると、妥当と言える。
新入社員のときはそれほど差はない。
大きく変わってくるのは、入社して10年ぐらい経ったあと。
つまり出世の影響が大きい。
転勤が多い会社は、転勤すると出世する。
転勤したのに出世しないと社内で「あの人は飛ばされたんだな」なんて陰口を言われてしまう。
もうひとつは出世の上限値。
入社するとき、特に転職の場合はあまり説明されないのだが、一般職では出世の限界を決めている会社がある。
では、出世の限度がある会社っどれぐらいあるのか?
一般職の出世の限界
下記のグラフは「昇進できる管理的ポジションがあるかないか」のアンケート。
(2013年:厚生労働省の企業アンケート)
一般職で昇進の「上限があると答えた割合が61%」「上限がないが34.9%」になっている。
このデータで気になるのが、総合職の中でも昇進の上限があると回答したのが24.3%もある。
推定だがこれは同族企業、いわゆる家族経営の会社の人が回答しているのではないか?と思ってる。
日本では上場企業の半分が同族企業。
例えばトヨタもキャノンも大正製薬も東武鉄道も同族企業。
中小企業では8割が同族企業であり、社長や専務などの重要ポストはみんな家族という会社は多い。
会社のルールとして上限はないが、暗黙の了解として上限がある会社もある。
転勤が多い会社の業種はどこ?
総合職は必ず転勤するか?と言われてたら違う。
そもそも転勤の頻度は業界によって変わってくる。
転勤の頻度が少ない業種は、総合職だが転勤が一度もなかった、という人もいる。
そして転勤が必ずある業種もある。
まずは「会社の社員数(規模)」から見た「総合職の転勤の有無」を見てほしい。
このグラフの注目点は真ん中の「総合職の転勤の可能性がほとんどない」と言ってる会社の割合。
社員数が300人以下の会社は、4割の会社が「総合職でも転勤がほとんどない」と言っている。
会社の規模が大きくなり社員が増えると転勤の可能性が高くなる。
これを業種別にしたグラフがこちら。
各業種の会社が総合職の転勤の可能性として回答している。
このデータが残念なのが業種によっては無回答が多いところ。
この無回答は「他にもたくさんアンケートがあるから、たまたま抜けたのか?」それとも「意図があって隠したいのか?」は分からない。
だから見方としては、
青の「総合職が転勤の可能性がある」の量を見るのではなく、
オレンジの「総合職の転勤の可能性がほとんどない」の量を見てほしい。
(意図として隠したい場合「無回答」が「転勤あり」に含まれる可能性が高いため)
それと「n数」が少ないものも注意が必要。
「n数」とはアンケートを取った企業数であり、これが少ないと信憑性も下がる。
試しに「総合職の転勤の可能性がほとんどない」と回答した会社が25%以下の業種は下記のようになる。
(総合職の転勤の可能性がほとんどないが25%以下の業種一覧)
- 鉱業・採石業・砂利採取業(n数が少ないため信憑性低)
- 建築業
- 電気・ガス・熱供給・水道のインフラ系
- 卸売業
- 金融・保険業
- 学術研究、専門・技術サービス業( 例:土木建築の設計や法律、財務及び会計など)
- 飲食サービス
- 生活関連サービス業・娯楽業(例: 美容師・旅行業・結婚式業など)
これらの業種で、かつ大企業で総合職になったら転勤の可能性はかなり高い。
お金を使い他人に損得させる仕事は転勤が必須
お金の扱う権限がある仕事は転勤が多い。
例えば、金融系や保険業界。
これらの仕事は、顧客との癒着を防ぐために転勤が繰り返される。
銀行は着服する社員もいて、頻繁に報道されている。
もちろんそんな事をする人は一部だが、会社の上層部は社員を信用できない状態。
だから「着服や癒着する前に転勤させてひっぺがす」という方法を取っている。
これは製造業(ものづくりの会社)でも似たようなことが起きる。
ものづくりの会社は購買部という部署がある。
購買部は外注先と価格交渉するのが仕事。
外注先は仕事がほしいから購買部に金銭的なものを渡す会社がある。
または、飲みや食事に連れて行ったり。
購買部はその代償として他社の見積額を教えたり、優先的に仕事を回したりする。
見積額が分かれば、その少し下を狙えば競争に勝てるという仕組み。
これは現在でも世間に公表されてないだけで結構ある話。
だから購買部は転勤させるか、担当の顧客をコロコロ変えたりする。
大きくない会社では、購買部は年配者中心にするところもある。
これは「年配の人の方が経験もあり、落ち着いていて交渉がうまい」という要素もあるが、「歳を取ると転職が難しく、失業したら大きく給料が下がってしまうというリスクを抱えるという抑止力効果」もある。
お金を動かし誰かに損得させる権限がある仕事は転勤が多い。
「総合職か一般職か?」問題は「お金か人か?」問題
「総合職か?一般職を選ぶか?」は「転勤を許容するかしないか?」という問題に変わる。
転勤は個人の考え方が色濃く出て「色んな土地に行きたい」という人もいれば「絶対に行きたくない」という人もいる。
そして「転勤したくない人の理由」として多いのは人間関係。
親や子供、恋人や夫婦、友人や知人、これらの人と離れたくないという想いを持っている。
そう考えると「総合職 or 一般職」の問題は「給料+出世」 or「人間関係」のどっちを取るか?という問題になる。
特に友達関係には距離が重要な要素。
これはきれい事じゃないんだよねぇ。
20代前半の頃は、頻繁に地元と行き来していた人も、20代後半になるとポツポツになる。
30代になると「ずっと友達だよな」と思っていた友人は、自分が知らない人間関係を築き「地元に帰っても会う人がいない」というケースはよくある。
だから「給料+出世 or 人」という問題はとても難しい。
「仕事の真の目的はお金を稼ぐため。だから給料や出世を取る」というのも正論。
「人生を豊かにするのは、周囲の人がいてこそ。仕事のために生きてるわけではない」というのも正論。
どちらも正論であり、どちらかを選択しないといけないジレンマ。
これは「人生の豊かさって結局なに?」という価値観の違いによって変わってくる。
また価値観は歳を取り、経験することによって変化するもの。
どちらを選択しても「やり直せない」とまでは言わないが、年月が経つとやっぱり難しいよ。
だから出来るだけ未来を想像して選択してほしい。
10年、20年の先を見るのは難しいが、出来るだけ明確なイメージを持って。
後悔しないようにたくさん悩むしかない。
おさらい
- 総合職・一般職の違いは「給料」「出生」「転勤の有無」
- お金で誰かを損得させる職業は転勤が多い
- 「総合職と一般職のどっちが良いか?」は「お金を取るか人を取るか」問題に行き着く