求人を見ると給料が「28万~36万円」と異常に高い会社がある。
その内訳を見ると「基本給22.5万円以上+固定残業手当4万円(残業20時間分)+住宅・資格手当1万5千円」なんて記載がある。
「固定残業手当4万円(残業20時間分)」って一体なんだ?そんな疑問が湧く。
この固定残業手当という言葉は求人雑誌や転職サイトはもちろん、ハローワークの求人にも登場している。
最初に結論を言えば「その会社には就職しない方が良い」。
どうしてもその会社を候補に入れたいのであれば、入社する前に疑問がなくなるように会社の話を聞き、言われたことをメモに残すぐらい慎重に進めた方が良い。
固定残業(みなし残業)の基礎ルール
固定残業(みなし残業)は予め想定される残業を固定費として支払われる制度である。
だから固定残業の場合「残業20時間分とする」という文言が付いている。
疑問なるのが、もし残業が10時間しかなかった場合はどうするのか?
その場合、20時間分の残業費が全額支給される。
逆に残業が40時間だった場合はどうなるのか?
その場合は固定残業代にプラスして20時間分の残業代がでる。
出さないと法律違反。
そう考えると働く側から見ると「損はないのでは?」と思える。
しかしルールを決める権限を持っているのは会社である。
会社にメリットがないとおかしいと思いませんか?
一般論。固定残業(みなし残業)にする会社のメリット
固定残業にする会社側のメリットとは一体なんだろう?
世間一般論としては理由が挙げられている。
①働く人に安定収入を与え安心させることで退職率を下げる
働く側にとって収入が安定しないのは不安である。
特に住宅ローンや車のローンを組むとき。
これらのローンは支払額も大きくその分利息も付く。
できるだけ短期で支払った方が得である。
しかし残業代は会社の仕事の量で決まってしまうため安定しない。
もし残業がなくなったら払えるのか?という問題を抱える、
そこで残業費を固定化することで、働く人に安心してもらい結果として退職率を下げる事ができる。
と言われている。
皆さんはこの理由を聞いてどう思いますか?
本当に働く人に安心してもらえるのでしょうか?
そもそもの話をしてしまうと働く人は、会社の景気によって収入は大きく変動する。
その理由はボーナス。
ボーナスがあまり変わらない人は意識が薄れてしまうが、ボーナスは利益が減ればゼロになる。
決算時期に利益によって変動するから、ボーナスは別名で決算賞与と呼ばれる。
ボーナスは変動し収入に大きく影響を与えるのに、残業を固定するとなぜ安心できるのか?
もし社員に安心感を与えるのであれば、ボーナスも固定すれば良いのだが、そんな会社は存在しない。
②残業代を予算化しやすい
会社から見ると残業代というは毎月変動する出費である。
小さな会社はともかく、一定以上の規模になると社長は従業員の管理が難しい。
果たして今月は従業員がどれぐらい残業しているか?余裕がない会社は不安になる。
そこで残業を固定にすることで予算が立てやすい。
と言われている。
家庭でも電気代・水道代・ガス代は毎月変動する。
変動するということは、使い過ぎてしますとその分出費が増える。
家族が多いと誰かが無駄遣いしてしまうことがあり管理が難しい。
仮にあなたの家庭の電気代が月に6000円~8000円に変動していた場合「変動すると不安だから毎月8000円に固定しよう。そして8000円を超えた場合、追加分を支払おう」と思いますか?
誰がどう考えても損しかない。
③社員に時間の意識を持たせ効率化できる
会社内を見渡すと仕事中に雑談している人がいる。
雑談もある程度はコミュニケーションとして目をつぶるが、明らかに度が過ぎる人もいる。
職場を友達作りの場所と勘違いしていのか?とさえ思ってしまう。
そんな従業員に時間を意識させるために、固定残業制度を導入する。
例えば固定残業を20時間に設定すると、働く側からすると残業5時間に収まれば残りの15時間分は丸儲けになる。
それによって従業員は効率良く仕事をするように意識改革ができる。
と言われている。
もし本気でそう思っている人がいれば「仕事の効率化の目的は何ですか?」と聞いてみたい。
仕事の効率を上げる事は目的ではなく手段のひとつ。
仕事を効率よく行うことで、会社の利益を上げることが目的である。
固定残業制度を導入した場合、いくら仕事の効率を上げても、利益は変わらない。
「木を見て森を見ず」と言える愚かな行為と言える。
④残業の計算が楽になり費用が削減される
給料の計算は月に1回、年に12回行われる。
ボーナスを含めると14回になる。
固定残業にすると多くの社員の給料は一定になるため、計算がとても楽になる。
計算が楽になれば事務員の負荷を減らすことができる。
と言われている。
もし固定残業によって計算が楽になったという会社があれば、そこは未だに電卓かそろばんで給料計算している会社のみです。
今はタイムカードを使っている会社ばかりで給料はパソコンによる自動計算です。
固定残業により計算が楽になったと言っている会社に明日はないだろう。
会社が固定残業(みなし残業)にする本当のメリット
世間一般に言われている固定残業のメリットは建前でしかない。
本当のメリットは別にある。
求人を探すときは「会社側からみた本当のメリット」を考えよう。
①みなし残業は求人に給料を高く表示できる
中小企業は求人募集しても人が集まらない会社がある。
「会社の規模=安定」と見る人は多い。
そこで簡単に人を集める方法は給料を上げること。
しかし給料を高くできたら中小企業の社長は苦労しない。
そこで給料を高く見せる方法としてみなし残業が使われる。
例えば「基本給22.5万円+固定残業手当4万円(残業20時間分)+住宅・資格手当1.5万円」っであれば求人に「給料:28万円以上!」と記入できる。
通常は残業が変動するから給料として求人に書くことができない。
給料を高くみせるとそれだけ応募数も増え、より良い人材を確保することができる。
ただし見せ掛けだけなので、それなりの人しか集まらないというのが本当のところ。
②みなし残業は訴える人が少ない
そして固定残業の最大のメリットは追加の残業代を支払わないこと。
実際には固定残業制を導入している会社は追加分の残業代を支払っていないことが多い。
会社は「適切な仕事を与えているが、終わらないのは君の努力が足りないのではないか?」とか言ってごねる。
この仕事の適切な量というのが懐疑的。
そもそも仕事とはイレギュラーの連続であり、イレギュラーがない仕事は人が行う必要がなくロボット化される。
さまざまなイレギュラーに対応するから人が必要になる。
多くの仕事では時間を正確に推定するのは難しい。
この難しさを利用して「残業する=能力不足」というイメージを植え付ける。
そして残業代がゼロという会社もある。
そう考えると「オレが悪いんだし、残業ゼロの会社よりマシかぁ」と考えてしまう。
それに残業ゼロの人の多くは退職してから裁判する。
労働基準監督署に告発する人もいる。
しかし、みなし残業の場合は「時間超過分の残業は出なくて普通」と思う人が多く、訴える人が少ない。
【余談】管理職の残業代固定は違法じゃない。混同に気をつけよう
管理職になると残業代がなくなる。
管理職とは一般的には課長以上。
かっこよく言葉を使えば「年俸制」に切り替わる。
これが当たり前であるために一般職の残業固定も「しかたがないよね」と考えてしまう人がいる。
法律上は「管理職の残業代なし=合法」で「一般職の残業なし=違法」になる。
なぜ管理職の場合は合法になるかは、一般職の管理権限と採用権限を持っているから。
その権限を使えば「自分の仕事量も調整できるでしょ?」っというのが理屈。
(自分の仕事量を管理できている管理職を見たことがないが)
これを一般職の人にも当てはめ合法化しようとしてるのが「高度プロフェッショナル制度」
古い名前では「ホワイトカラー・エグゼンプション」とも言われる。
現在の案では年収が高い人のみに規制しようとしているが、だんだん適応範囲を広げられることは間違いない。
確かに残業代欲しさに残っている人もいる。
ひどい会社では仕事中に寝ている人もいる。
これが会社にとって無駄な負担になっているのも事実。
でもそれは注意すれば良いだけであり、管理職の責務だと思うのは私だけでしょうか?
怠けている人はともかく、真面目にやっている人が個人で効率を上げられる量はたかがしれている。
ただし会社の仕組みを変えられれば改善の余地がある。
部内の事は一般社員でも変えれるが、会社全体の話になるとそれなりの権限を持っていないと難しい。
これも管理職の責務だと思うのは私だけでしょうか?
ハローワークの求人でも気を抜かずに確認しよう
固定残業制を導入している会社の求人は、転職サイト・転職エージェント・ハローワークにもある。
全ての求人に存在するのだが、ハローワークは国の機関だから安心だと思うわないで欲しい。
ハローワークの求人で固定残業の会社の場合「時間超過分の残業代は追加で支給します」と必ず書いてある。
これはハローワークが国の機関であり、固定残業の会社には「この文言を書かないと求人は乗せません」と言っているから。
但し本当に超過残業分を支払っているかは確認していない。
形だけ整っていればハローワークは求人を出す。
その理由は求人を紹介するのはハローワーク(公共職業安定所)だが、それを指導するのは労働基準監督署という別の機関が行っている。
素直に考えれば「ハローワークと労働基準監督署が連携して調査してくれよ」と思うが、それをやるとハローワークに求人を出す会社は減る。
それぐらい法律を守らない会社は多い。
現在でも転職サイトや転職エージェントが力を付けて多くの求人を抱えているのに、さらに差が開くとハローワークの存在価値にまで影響する。
固定残業の会社は疑え
固定残業制で超過残業代を払ったら会社にメリットはありません。
それでも一部だがちゃんと残業代を払っている会社もある。
もちろん未払いの残業を請求することはできる。
しかし払わない相手から強制的に支払わせるには、裁判以外に手がない。
裁判なんてしたら会社に居づらく退職するのが落ちである。
だから多く人は泣き寝入りしている。
求人を見つけた場合は入社する前に、必ず固定残業のルールを確認すること。
入社後に後悔しても遅い。
おさらい
- 固定残業(みなし残業)は、みなし分以上の残業をしたら追加で残業代が必要
- しかし現実を見ると追加分は支払わない会社がある
- 固定残業をちゃんと運用している会社は損しかない。
- 固定残業の会社は入社前に残業の仕組みを確認しよう