皆さんは失業保険を自分で計算したことはありますか?
私は今まで一度もありませんでした。
過去には2回ほど失業給付金をもらったことがありますが、ハローワークの言われるがまま「もらえるならラッキー」としか思っていなかった。
最近、知人が勤めていた会社が倒産し無職になった。
だからハローワークに行き「失業保険ってどれぐらいもらえるのか金額を教えて下さい」と聞いたら「だいたい給料の7割ぐらいです」と言われたらしい。
不親切というか「ちゃんと計算してくれれば良いのに」と不満を漏らしていた。
それがきっかけで自分で計算してみようと思った。
いろいろ専門用語が出てくるが、結局知りたいことは「月給がいくらの人がいくら貰えるのか?」である。
計算して見た結果・・・「何じゃこの仕組みは?」という感じた。
何度も「計算が間違っているのか?」と疑うほどに。
ルールを確認。失業保険をもらう資格がある人ってどんな人?
話を進める前に言葉の意味から。
失業保険の正式名称は雇用保険と言う。
昭和50年に失業保険法から雇用保険法に名前が変わっているので「雇用保険」と呼ぶのが正しい。
しかし失業保険の方が馴染みが深いので、ここでは失業保険に統一する。
まずは失業保険を受けるための条件。
どんな人がもらえるのか?
- 失業中で就職する意欲があり働ける健康状態・家庭環境にあること。
- 1年以上失業保険を払っていること(自主退職の場合)
- 6ヶ月以上失業保険を払っていること(会社都合の場合)
- 次の転職先が決まってないこと。
簡単に言うと
「失業保険を一定期間払ってない人にはやらん」
「失業保険の目的は転職活動の支援だから、働けない奴や次の会社が決まってる奴にはやらん」
ということです。
ルールを確認。失業保険はいつからもらえる?
失業保険がいつからもらえるかは、退職理由によって違う。
会社都合であれば早く給付され、それ以外は自主都合となり遅れる。
会社都合の場合はハローワークに申し込んでから、約1ヶ月後に1回目の振込がある。
自己都合の場合は約4ヶ月後に振込になる。
会社都合になる場合とはどんな場合か?
簡単に説明すると「会社の都合で大きな不利益を生じた人」が対象になる。
もし自分が「会社によって迷惑かけられた」と思ったら、ハローワークのHPで行って確認して欲しい。
ここでは自己都合だと勘違いしてしまう例を紹介する。
ひとつは退職勧告です。
退職勧奨とは「退職してもらえませんか?」と会社から促されること。
これは会社都合による退職になる。
お願いになるため強制力がなく「あなたも同意したんでしょ?」と言われたら、その通りなので自主退職に思ってしまう。
しかし実際には退職勧奨されて働き続けるのは難しい。
だから会社都合になるのだが問題は証拠。
多くの場合は口頭になるため証拠も残らない。
その場合は退職届に「一身上の都合」ではなく「会社からの退職勧奨により」と書いて提出前にコピーを取った方が良い。
それが受理されれば会社は認めたことになる。
もし「一身上の都合」に書き直すように言われたら「戦う」か「諦める」の2択。
戦う場合は「いつ」「誰に」「何を言われたか」を手書きでも良いのでメモを取って、労働基準監督署に直談判すること。
もうひとつ自己都合だと勘違いされやすいのは、残業が多い人。
残業時間が多い人も会社都合になる。
残業が多いと健康に影響するため「辞めてもしかたないよね。だったら会社都合にしてあげよう」という理屈。
具体的には下記の3つの条件のうち、いずれかに該当すればよい。
- 残業時間が退職前の6ヶ月間で45時間以上が3ヶ月連続
- 残業時間が退職前の6ヶ月間のうちのどこかで月に100時間以上
- 残業時間が退職前の6ヶ月間のうち連続する2ヶ月平均が80時間以上
残業が45時間とハードルは低いから、会社都合になる人は多い。
(ちなみに2018年6月29日に成立した働き方改革(高度プロフェッショナル制度)では「年間の残業は720時間、月に100時間までは問題ない」となった。この法律と失業保険が会社都合になる考え方に矛盾を抱えたままになっている)
失業保険はどれぐらいもらえるのか?
失業保険を計算するために、厚生労働省のホームページを見ると掲載されている。
下記は29歳以下の人がもらえる失業保険の給付の計算方法が書いてある。
これを見てぱっと意味がわかりますか?
給付額がいくらになるか、想像できますか?
私には「分かりづらい」と思った。
専門用語を使うと難しくなるので、簡単に言葉に置き換えると下記のような内容になる。
そして、この表から分かるポイントは
- 給料が高くなると失業保険のもらえる率は下がるように、3パターンの計算方法に別れている。
- 上限値が決まっている
ということ。
雇用保険とは働く人に義務化されている税金みたいなもの(会社も負担あり)。
税金は所得の再分配によって弱者救済のために使われる。
だから給料低い人には給付率が高くなっているってことだね。
失業保険のもらえる額を計算してみた
では実際に失業保険でもらえる金額を計算してみた。
下記の表は「給料が1万円ごとに失業保険でもらえる月額(30日)はいくらになるか?」である。
本来の失業保険は28日分の失業保険を28日ごとに振り込みになるのだが、ここでは月給と比較するために30日分で計算している。
(下記の表は小さくて見えないので、下のリンク先に掲載します)
表だとよく分からんってことでグラフ化してみた。
まずは29歳以下の人はどうなったか?
横軸が「会社からもらっていた月給」で縦軸が「30日分の失業保険の給付金」である。
このグラフを作って感じた違和感は・・・「赤丸で囲んだこの変な形はなんだ?」である。
給付金の上限値にスムーズに向かえば良いのに、途中で無理やり上限値に達するようなグラフになる。
そしてグラフは3つの計算式から成り立つ。
解釈を入れるとこんな感じになるだろう。
①の部分は「給料が低い人に手厚くするため上昇させる」
②の部分は「給付金の上限値に向けてなめらかにカーブを描く」
③の部分は「給付金上限に到達させるため強引に上昇させる・・・・」である。
そして上限値に達するための月給は41万円である。
「え?月給で41万??」
繰り返すがこれは「29歳以下の人」である。
・・・。
・・・。
・・・。
「29歳以下で月給41万円以上、稼いでいる人ってどれだけいるのでしょうか?」というのが素朴な疑問。
疑問と同時にこの給付金額を決めている厚生労働省の役人の声が聞こえた。
(ここからは想像の声)
Q1.失業保険の計算って月にどれぐらいもらえるか、分かりづらいのですがなぜですか?
A1.失業給付金を月ごとに換算すると上限金が月給41万円(29歳以下)になり、ほぼありえない数字だということがバレてしますからです。ちなみにハローワークでお渡しする資料には計算できないようになっています。
Q2.実際に29歳以下で月給41万円を超える人っているのでしょうか?
A2.存在しますが特殊な職業か、一般的な職業の場合は残業時間が100時間を超える人になりるでしょう。ちなみに過労死ラインの残業は80時間と言われています。
Q3.もらえる人がほとんどいない月給のところに上限金を設定する理由は何ですか?
A3.上限金の金額を高めに設定することで、失業保険は充実していると錯覚して頂けます。不満がなくなることで雇用保険を払って頂けますし、仮に雇用保険金を無駄使いしても不満を抑える事ができます。
繰り返すが、上記のQ&Aは私の心の中で聞こえた想像の声です。
私の心がゆがんでいるから、厚生労働省の役人がこのような声が聞こえただけです。
29歳以下で月給41万円を達するためには、どれぐらい残業が必要なのか?
例えば、月給23万円の人は、106時間の残業が必要になる。
(一ヶ月の出勤日数が21日、1日の労働時間が8時間で計算)
残業が100時間を超えると睡眠時間を5時間確保するのは難しくなってくる。
つまり普通の給料の人が給付金の上限値に達するためには、慢性的な睡眠不足なり、もしやすると過労死するという覚悟を持たないといけない。
失業保険。30代・40代・50代も計算してみた
日本の場合は80%の会社が60歳定年、15%が65歳定年になっている。
だから多くの人は60歳までは働ける前提で人生設計している。
(60歳から再雇用される会社は多いが、再雇用ということは入社1年目になり給料は大幅に下がる。しかも1年ごとに更新される契約社員となる)
失業保険の目的は転職活動の支援だから、59歳以下の人がどうなるか?が重要である。
ちにみに給付金の上限額は下記のようになっている。
29歳以下 | 30歳~44歳 | 45歳~59歳 |
6815円 | 7570円 | 8335円 |
なぜ年齢が高くなると上限額は上がるのか?
推測だが20代に比べ、住宅ローンや子供に掛かるお金・老後が心配になるからだろう。
29歳以外の世代も計算したグラフは下記のような結果になった。
このグラフを見てもうひとつ驚いた。
それは月給が41万以下の人はまったく同じ額である。
普通は子供が高校や大学に行くことが一番お金がかかる。
今は晩婚化が進んでいるので30歳で出産した場合は、50歳前後の人が大変な時期。
その時期に職を失った人には、ましてや給料が低かった人には、それなりの手当が必要ではないだろうか?
ここでまた厚生労働省の役人の声が心の中で聞こえてきた。
Q1.年齢が上がると給付金の上限額が上がる理由は何ですか?
A1.年齢に応じて給付金の上限額を上げることで、多くもらえるように見せかけることができます。与えるのは安心ではなく、安心感を与えることです。
Q2.月給41万円以下はどの世代も同じですが、どのような理由でしょうか?
A2.傾向として給料が低い人の方が転職します。年齢が高いからといって給付金を上げると独立法人に渡すお金がなくなり我々の天下り先がなくなります。
Q3.年齢が高いとお金の心配も増えるので、お金が掛かる世代には給付金を手厚くした方が良いと思うのですが?
A3.転職される方は忙しく、給料が低い人は切羽つまっています。自分がもらえる給付金ぐらいしか計算しないので、バレることはほとんどありません。バレても少数派なので問題はないでしょう。
Q4.45歳~59歳の人は給料が高い人も多いから、給付金の上限値も高くしているのでしょうか?
A4.日本の大きな企業には役職定年があり、55歳から給料は下がります。退職勧奨されやすいのもこの世代であり失業者は増えますが、給料が下がった後なので大きな支出になりません。
しつこいが、これは心の病に掛かった私だけが聞こえた声です。
厚生労働省の方がおっしゃっているわけではありません。
60歳以上の失業保険も調べてみた
気分が悪く嫌になってきたが、60歳以上の失業給付金も調べてみた。
29歳以下と比較したのが下記のグラフ。
60歳~64歳は29歳以下と比べて、所得が低い人、中間層は下がる。
65歳以上になると29歳以下とまったく同じである。
ワンパターンになってきたが、また厚生労働省の声。
Q1.60歳~64歳の失業給付金がかなり低いように感じますが?
A1.日本の8割の企業は60歳で定年を迎えます。しかし年金は65歳から始まるので再就職する人が多数います。財政健全の目的で支給額を減らしています。
Q2.特に60歳~64歳の「低所得者」の給付金が下げられているようですが?
A2.日本の多くの企業は60歳で定年を迎え、その後は再雇用制度を使い働く人が多くいます。しかし再雇用されると給料は下がり、会社によっては大卒の初任給ぐらい変わらないレベルです。低所得者の給付金を下げることで効果的に財源の支出を抑えています。
Q3.60歳で定年を迎える人は、長く働き雇用保険も払っているので不公平にも感じますが?
A3.退職金という一時金が入り、不満を抑える効果があります。
Q4.65歳以上になると、失業保険の給付金がまた高くなるのはなぜですか?
A4.65歳以上になると健康上の理由により再就職しない人が多くいます。よって給付率を高くしても財政にほとんど影響ありません。時間がある方も多く苦情になるぐらいであれば給付金を高くした方が良いと考えます。
上記は私の心の中の声・・・(以下省略)
失業保険給付率80%なんて貰えない現実
ハローワークでもらう資料には失業保険の給付率は80%~50%と書いてある。
これを見ると「給料の8割の金額がもらえるかも」と思ってしまう。
しかし給付率が8割の人なんてほとんどいません。
8割もらえる人の月給は15万円以下の人のみ。
2019年東京の最低賃金は1013円。
この時給で21日出勤・8時間労働すると170,184円になる。
つまり東京でフルタイムで働く限り、給付率80%はありえない。
2019年最低賃金の全国平均でも約874円。
21日出勤し8時間働くと146,831円になる。
つまり給料が146,831円~150,000円のごくごく狭い範囲の人のみが給付率80%になる。
おそらく給付率が80%を超える人は、週に3日~4日働くバイト・パートの人だろう。
(ただし月に11日以上の出勤しない被保険者期間と認められない)
本気でお金に困っている人は、パートでも長時間働く。
逆に余裕がある人は、短い労働時間で済む。
でもお金に困って長時間働くと、いざ失業したときに給付率が下がる。
そう考えると「失業保険の給付制度って、なんかおかしくない?」と思えてくる。
最後に「厚生労働省のみなさまへ」
おこがましいのですが、働く人を代表してものを言わせて下さい。
失業保険は私達が毎月給料から積み立てているお金です。
だから失業保険(雇用保険)とは困っている人を救済するためにある制度だと思っていました。
しかし自分で計算するとそうでは無いことに気付かされました。
転職って大変なんです。
転職にはよくキャリアップなどと前向きな言葉が使われますが、多くの人は建前でしかありません。
ほとんどの人は何か大きな悩み事を抱え、転職にはリスクがある事を知りながら、それでも現状を打破するために転職を決断しています。
それが民間企業に勤めている人の現状です。
その働く人達に対して『あんまりなめた制度を作らないで頂きたいです』
失業保険の給付率は2020年8月にも改定する予定ですよね?
来年の給付率改定を楽しみにしています。
(自分の失業保険の給付額をしりたい人は、失業保険(雇用保険)給付金の早見表を確認。
こちらのページは失業保険がもらえる金額である28日分で計算しています)