今回は職業訓練について。
みなさんは国(ハローワーク)が職業訓練を行っているのを知っていますか?
職業訓練とは就職できない人に対して、能力を向上させるために支援してくれる。
ハローワークが職業訓練をしている訳ではなく、実際には外部の民間へ委託している。
その委託先は主に「ポリテクセンター」という名前で呼ばれる機関で行われる。
(正式には職業能力開発促進センター)
ポリテクの意味は「技術系専門学校」を英語にしてポリテクニック(polytechnic)を略したものらしい。
このポリテクセンターは何を教えているのか?その分野は結構広い。
理系の分野では情報・通信系、電気系、機械系、建築・木工系。
その他には介護系や医療事務・不動産系、などなど受講できる分野がある。
(地域と分野によってはポリテクセンターではなく別の外部機関の場合もある)
とは言っても全国で同時にこれだけの分野が受講できるか?と言われたら「No」である。
各県ごと受講できる日と分野がスケジュールされており、そこにピッタリはまらないと受講することは難しい。
受講期間は分野によって変化するが、多くの分野は半年間になっている。
素晴らしいのは料金は安いこと。
かかる費用は教科書代ぐらいで1万円前後。
(授業内容によって金額は違うが高くはない)
半年で1万だよ。
小学生の塾でも月に1万円ぐらいかかるのに、半年で1万円は安すぎる。
価格破壊と言っても良いぐらい安い。
しかも先日(2017年8月)に見たテレビ朝日系のニュースでは就職率が9割を超えると言う。
そのニュース動画はこちら。
電車の中や音が出せない環境の人のために、動画の内容をまとめると
・職業訓練であるポリテクセンターの就職率は9割を超えた
・金属加工やコンピューターなのど実技訓練を実施して失業者を支援
・女性の受講者も約2割に達している。
・子育て世代でも受講できるように託児所を無料で提供。
これすごくない?
たった1万円程度の出費でこの待遇と成果。
職業の幅も広く、さまざまなカリキュラムが用意されている。
期間は半年間程度でこの職業訓練を受けたら90%の人が就職できるんだ。
よし!おれも使わない手はない!
ハローワークにレッツゴー!
・・・。
・・・。
・・・。
ちょっとお待ち下さい。
ぼくの話を聞いてからにしてくれませんか?
そもそも大卒・高卒の就職率はウソだらけな件
皆さんは大学や高校の就職率ってどうやって決まるかをご存知でしょうか?
就職氷河期と呼ばれた2000年(平成12年)前後の就職率はとても低いと言われていた。
それが厚生労働省の統計を見てみると・・・
この統計から何が言えるのか?
つまり就職氷河期なんてウソ!
ニュースで氷河期だ氷河期だなんて言うから、ビビらせやがって!
ほとんど全員、就職できてんじゃん!
しかも高卒が就職率ほぼ100%なのに、大学行ったら90%まで下がってやんの!
4年多く勉強したのに仕事に就くことができず!
勉強するだけムダじゃん!
じゃなくて、この厚生労働省のデータがウソなんだ。
ウソと言ったら言い過ぎだが、大きなごまかしが入っている。
このデータに就職希望率を加えてみるよ。
就職希望率っていうのは「何割の人が就職を希望していたか?」って数字ね。
この数字を見てどう思う?
まぁ、高卒の人は大学に進学しようとする人がいるから、就職希望率が60%前後なのはあり得るかもしれん。
大学は?
大学行った人の中で就職したい人って60%しかいなの?
大卒の3割~4割も大学院に行くの?
あなたの周りの大卒を10人集めたら、その内の3~4人は大学院に行ってる?
ましてや今の時代じゃなくて、2000年って現在40歳前後の人だよ。
そんな大勢の人が大学院に行っている訳がない・・・。
そんなに多かったら、どこの会社も大学院卒だらけだよ。
ここの就職率には手品のような裏技がある。
この就職率は就職希望者の中で、就職できた人の割合になっている。
一見、正しそうに思える。
けど、就職活動を頑張ったけど、卒業間近の3月まで内定がなかった場合、あなたは就職希望しますか?
卒業間近の3月31日まで頑張ってねばる?
もう募集している会社なんてほとんどないよ。
オレだったら諦めてバイトを探すね。
で、就職希望率のアンケートをいつ取ったのか?
それは3月です。
そうなんだよ。
この統計は3月の最終日まで就職を希望する人、つまり奇跡を望む人じゃないと就職希望者にならない。
つまりは就職奇跡希望者の割合。
普通の人は
・就職率=就職できた人 / 大学院へ進学希望者を除く卒業者数
だと考えるだろう。
しかし現実は
・就職率=就職できた人/就職希望者数
になっている。
なんでこんな分かりづらい数字を使っているかは簡単。
就職率が低いと「ハローワークや政治は何をやってんだ!税金どろぼうが!」って不満がでるわけ。
それを言われた時に「いやいや。就職率は90%を超えています。就職を希望しない人に就職させるのは無理っしょ?」て言い訳ができる。
それだけです。
職業訓練の就職率90%は本当か?
ではでは、ここからが本題。
職業訓練の就職率90%は正しいのか?
実は会社でポリテクセンター(職業訓練)から採用すると、ポリテクの担当者がたまに会社に来るんだ。
「採用された田中さんの様子はいかがでしょうか?」って感じで聞き込みに来る。
で、その担当者に聞いてみたの。
「就職率が90%ってウソでしょ?」って。
(我ながらなんてストレートな質問)
そしたら「いや~、実はアルバイトやパートも含めた数字です」と答えたよ。
・・・・・なんだよそれ。もう笑うしかないよね。
ポリテクセンターの就職率は、雇用形態がバイトでもパートでも含まれている。
ポリテクセンターに通う人は、多くは転職者のわけ。
そりゃ、転職が無理だったらバイトぐらいするよ、生活があるもん。
バイトやパートに職業訓練がいるか?
コンビニやファミレスのバイトに金属加工や簿記の知識が必要なのか?
というか10%の人がバイトもしてない事の方が驚くわ。
10%の人はフリーターにもなれずにニートやっているってこと?
ある職業になるためだけに半年間も頑張った人の内、10%がニートになったらニート製造機じゃねぇーかよ。
職業能力開発促進センターじゃなくて、ニート開発促進センターか?
・・・。
取り乱した。すまん。
なぜバイトやパートを含めてまで就職率を高めたいか?
これは厚生労働省の就職率とまったく同じ考え方。
ポリテクセンターは独立行政法人と呼ばれるところ。
若い人は知らない人もいるだろうが、橋本龍太郎総理大臣が行政改革として作ったのが独立行政法人。
官僚さんの天下り先としても使われている。
その天下り先の成績が悪かったら「成果出せないなら辞めちまえ」って言われちゃうでしょ?
だから意地でも就職率を高めたい。
なんでもいいだけどさ・・・。
政治家さんは官僚のために、オレが払う税金で天下り先を作って、そのお給料でどうぞ大型テレビでも買ってくんさいな。
ただ・・・保身のためにバイトやパートも就職率に含めてしまおう、という魂胆が腹が立つ。
真剣に就職に悩み、職業訓練に通う人の人生をバカにしているのか?
職業訓練を通った人は即戦力になれるのか?
オレが勤めている会社はものづくり系。
だから職業訓練で情報系、電気系、機械系を学んだ人が来る。
例えばパソコンでプログラムを学んだ人。
パソコンの画面上で設計図を書くCAD(キャド)というソフトを学んだ人。
機械加工機について学んだ人。
これらは仕事で使うツールを学んだにすぎない。
間違ってはいけないのは仕事を学べる訳じゃない。
分かりやすく言うと、ワードやエクセルってパソコンのソフトがあるよね。
ワードやエクセルが使えると文章も作れるし、グラフも表も作れる。
中学生の親戚がいるだけど、この子がパソコンが大好きでエクセルも普通に使えるのよ。
仕事の資料を見せて「同じように作って」と頼んだら出来ると思う。
では、この中学生は仕事ができるのか?と言われたら・・・できないよ。
仕事の資料はデータを綺麗に並べただけでは意味がない。
お客様や上司に説明し納得できる内容にして、初めて資料を作った価値が生まれる。
ツールは所詮ツールでしかなくて、それをどう使うのか?は別の能力。
もっと極端に言うと「電話が掛けられる」「人と話せる」「メールが打てる」この3つの能力があれば営業はスタートができる。
けど、物が売れるかどうかは、まったく別の能力が必要なんだよ。
きっと他の職業も同じだと思う。
介護職の人に「研修で人形を相手に入浴介護ができたから、実際の人でもできるよね?」と言ったらきっと怒られるだろう。
デザイナーの人に「Photoshopが使えれば出来るよね?」と言ったらきっと怒られるだろう。
機械設計の人に「CAD(キャド)ソフトが使えるようになったから設計できちゃうよね?」と言ったらきっと怒られるだろう。
なぜ怒るのか?
それはツールを覚える事が大変だった訳じゃなく、その他の能力を身に付ける事に苦労したからだと思うのよ。
ポリテクセンターの講師は大したレベルではない件
これもポリテクセンターに通った同僚から聞いた話。
「講師の人ってどんな感じなの?」と聞いたら「やる気があるのか?というレベルでした。ハローワークの人は苦情も多いって言ってましたね」だってさ。
もちろん全員がやる気がないとは思わない。
きっとやる気がある人もいるだろう。
けどね。
企業に勤めてガンガン働いて人が、職業訓練の講師になろうって思うかね?
勝手な予測にすぎないが、サラリーマンからドロップアウトした人の可能性が高いんじゃないかと・・・。
「サラリーマンって辛いよ。
なんか良い仕事はないものだろうか?
お。こんなところに地方公務員と似た待遇の職業がある。
職業訓練の講師だってさ。
なになに?
業務内容は素人相手に教えるのか・・・。
だったら楽勝だな。」
なんて声が聴こえるのは気のせいか?
きっと気のせいだ。
皆さん是非、ひとりのおっさんの妄想を忘れてくれ。
事実として言えることは、私の周りにいる職業訓練に通った人から聞く少ない統計では、講師の評判は決して良くはない。
ポリテクセンターに通えば得もある?失業給付金問題
ポリテクセンターに通うことによって、優遇されることがある。
もっともその恩恵を受けるのが失業の給付金。
失業給付金とは転職しようとしているが、次の就職先が見つからない人に対して現金が支給される制度。
雇用保険に入っている人はもらうことができる。
(不安な人は給料明細を見て雇用保険が引かれているか確認しよう。たぶんほとんどの人は入っている)
ただし、自主退職の人は「3ヶ月の待機期間」という訳が分からん仕組みがある。
待機期間とは、退職してから失業保険がもらえるまで待つ期間のこと。
(実際は雇用保険を使われないため遅延する仕組み)
3ヶ月後に勤続年数が10年以下の人は3ヶ月(90日)に渡り、現金が支給される。
10年以上の人は4ヶ月間(120日)。
もらえる金額を大まかに言うと、月給の半分から2/3ぐらい。
(給料が高い人ほど1/2に近づき、低い人(普通の人)は2/3ぐらいになる)
ざっくり給料が20万円の人は13万円ぐらいもらえる。
3ヶ月の待たされ、3ヶ月間しかもらえない。
これが失業保険の実態。
それがポリテクセンターに通うと・・・なんと!通っている期間は失業保険がもらえるようになる。
つまり職業訓練期間が半年ならば、その半年は失業保険が支給される。
しかも、なんと!受講手当という名の元に、最大40日の間、1日500円プレゼント!
一日500円ってバカにできないよ。
40日通ったら2万円だからね。
実質、教科書代の1万は負担してくれます!
そこに加えて!ひと月の42,500円を限度に交通費を支給されます!
ジャパネットたかたか?と言いたくなるぐらいのおまけ付き。
普通の学生は学費を親か自分で払う。
それが職業訓練になると本人が払うのは、教科書代関係の1万ぐらいで授業料は税金。
そこに加えて給料と同じ金額には及ばないが、失業保険ももらえる。
交通費や受講手当も税金。
まさに至れり尽くせり状態。
こんな超優遇だから希望者は、多いらしい。
しかし人が多く集まったときは
「職業訓練が終わったら、3ヶ月以内に必ず就職して下さい」と強く念を押すハローワーク職員がいるらしい。
「必ずって言っても採用されるか分からないので、約束は難しいですよ」と返すと
「そういう考えはやめて下さい」と怒り気味に言われたみたい。
おそらくだが、就職率に3ヶ月という縛りがあるのではないだろうか。
それでも転職者を思う気持ちがあれば「一生のことなので自分で納得された会社を目指すのが一番ですよ」と言えんのだろうか・・・。
ポリテクセンターの魅力は設備がすごい
ポリテクセンターの素晴らしいところもある。
それは教育実習に使われる設備。
例えば建築系の実習では、体育館みたいな広い場所で、実寸大の木造住宅の骨組みを組み立てる。
その後は壁やフローリングの内装や家具を取り付けて、住宅として仕上げていく。
(写真:住宅の骨組み)
世の中の1/3の男性は共感してもらえると思うが「すごく楽しそう」である。
こんなすごい事は、建築系の大学でもやらせてもらえないよ。
大学の建築科はデザインや都市計画が中心になり、実践とは遠ざかってしまう。
その点、ポリテクセンターは職業訓練と言われるだけあって、より実践向け教育と言える。
それと機械加工系の設備も充実している。
例えばNC旋盤と言われる加工機は500万円以上。
(写真:NC旋盤の見本)
マシニングセンタと呼ばれる加工機は2000万円以上。
(写真:マシニングセンタの見本)
これらの設備は学校にもあったりするが、学生の人数が多いので、接する機会は多くない。
これだけの設備を用意できるのは、税金を使った職業訓練の魅力。
しかし問題なのは就職先。
機械加工の就職先はいわゆる工場と呼ばれるところ。
その工場が未経験者の求人がないか?と言われると普通に求人はある。
つまり職業訓練を受けなくても就職できてしまう。
建築系も同じ。
実際に家を建てる職業は大工系であり、未経験者の求人がある。
それと大工系は日給制だったり、ボーナスがない会社が多いから、結局大工の道を選ばない人が多い。
そういう人は住宅営業やリフォームアドバイザーの道に進むのだが、これまた未経験でも募集がある。
もちろん会社としては、知識がない人より学んだ人の方が、教育期間が短くなるのでありがたい。
しかし職業訓練は会社の教育期間を短縮することが目的ではなく、その職業に就職させるのが目的。
そう考えると「職業訓練に行く意味ってなに?」という疑問が湧いてしまう。
嬉しいのは会社じゃね?って。
冷静に考えると職業訓練は本当に得なのか?
ちなみにオレは「失業保険や、その他の手当も税金だ!血税を無駄使いするな!」なんて言わないよ。
天下りやムダな箱物を作られるぐらいなら、皆さんに受け取って欲しい。
でも冷静に「職業訓練が本当に得か?」と相談されたら非常に悩む。
親のスネをかじっていた学生気分に戻れるだろう。
仕事のプレッシャーからも開放されるだろう。
職業訓練の期間は、会社からは空白の期間と思われず、転職が不利なる可能性は低いだろう。
けどね。
あなたの転職のライバルとなる人は、プレッシャーを受けて仕事をしているんだよ。
仕事を経験した皆さんなら知っているはずだよね。
学業より仕事の中で実践した方が力が付くことを。
独断と偏見で伝える。職業訓練の使い方
では、どんな人であれば職業訓練を利用すべきなのか?
それは職業訓練の期間「例え勉強になる事が少なくても良い」と割り切れる人。
そして自分が受けたいカリキュラムの期間と、失業期間が合致する人は職業訓練を受けるのもあり。
転職して仕事が始まったら、学生のような夏休みはない。
人生においてわずか半年間ぐらいダラダラした日々を送ってもバチは当たらないと思うし。
中には転職する為には資格が必要になり、職業訓練に行くべきか迷っている人もいるだろう。
迷って踏ん切りが付かない人は、数回の講習を受けて判断して欲しい。
このまま受講を続けて「自分のためになるのか?」を。
初めて学ぶ事であれば全く役に立たない事はないだろうが、問題は希望の職種に転職する目標にたどり着けるか?が見極めのポイント。
最初の段階で講師に「どのレベルまで習得出来るのか?」「企業はどんなスキルを持った人材を求めているのですか?」をガンガン質問攻めするのもあり。
その質問に曖昧な回答だったら、なんのリサーチもしてないってこと。
全ての職業は需要があるから成り立ち、だからこそリサーチが必要なのだが、こういった訓練学校が会社に足を運びリサーチしているかは怪しいよ。
もし受講してみて怪しいと判断したら、訓練を受講と並行して独学で学び始めるか、きっぱり職業訓練を辞めて転職に踏み切ってくれ。
役に立つ、立たないかの判断は難しいと思う。
難しいとは思うが、ここから先は自分で判断するしかない。
学生ではない私たち転職者には、正解を教えてくれる教師はいない。
自分のケツは自分で拭くしかない、という覚悟で決断せよ。
おさらい
- 職業訓練の就職率はバイトやパートも含んでいる。
- 職業訓練は仕事のツールを教えてくれても、仕事を教えてはくれるわけではない。仕事を学べる場所は学校じゃない。職場だ。
- 職業訓練は失業保険の目線では得。これが人生の得かどうかは各自で判断せよ。
ちなみに入社の応募資格が実務経験3年以上なのに、まったくの経験がないに入社したことがある。
詳しくは【転職の裏技】実務経験3年以上の応募資格。未経験でも内定を取った経験談
また職業訓練に似ているのが資格の話。
資格にもいろんな資格があるんだよね。
詳しくは資格は転職の近道なのか?役に立つ資格と無意味な資格