日産・スバルの完成検査から見えた品質問題。ものづくり業界の現実をみた

最近ニュースをみると「日産・スバルの完成検査問題」が報じられていた。

車を販売するためにはルールがあり、その検査をクリアーしないとならない。
検査には知識をもった認定員が行い「正しく検査が出来たか?」をチェックする。

今回の問題は検査は行っていたが、認定員の許可を得ていない人が行っていた。

これはルール違反である。

オレはものづくり業界に勤めて15年以上になる。

しかしこの内容でリコールになるとは思わなかった・・・。

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リコールの定義とはなにさ?

リコールというのはざっくり言うと無償で賠償や製品の交換することを言う。

その定義は

リコール (一般製品) リコールとは、設計・製造上の過誤などにより製品に欠陥があることが判明した場合に、法令の規定または製造者・販売者の判断で、無償修理・交換・返金などの措置を行うことである。

大切なのは赤字になっている”欠陥があることが判明した場合”という言葉。

では実際はどうなのか?

日産は1979年(昭和54年)から無資格者により検査を行っていた。

発覚した2017年だから38年前。
38年前の車を持っている人いる?

日産の中古車で完成検査が実施されていた、1978年以前に製造された中古車を調べてみた。

○フィアレディーZ

1978年の車であり、38年前なのに走行距離が7.4万キロ。
年間2000キロしか走ってなく「ずっと放置か!」と言いたくなるぐらい少ない走行距離。
ちなみに金額は270万円。

1978年は完成検査を認定員が行っていたからギリセーフ。

○シルビア タイプX

こちらは1977年の車であり走行距離は1.1万キロ。
年間289キロしか走っていない。
これは普通に「展示車だよ」というレベル。

車検とか展示場内しか走ってないじゃないだろうか・・・。
ちなみに価格は235万円。

次にスバル(富士重工)。
スバルはニュースによると30年以上前から完成検査を認定者が行っていない事を明らかにした。
スバルの30年以上前の車はこちら

○レックス

1981年の車(36年前)。
走行距離は8.7万キロの39万円の車

○レオーネ

年式は1987年だからちょうど30年前に製造された。
3.6万キロの37万円。

このスバルの車に共通して言えるのは「そんな名前の車あったの?」と言いたくなる。
もう20年以上販売されてないと思う。

おそらく上記の日産車もスバル者も街中で見かけることはない。

何が言いたいかというと、現在、日本で走っている多くの日産やスバルの車は完成検査の認定を受けていない。

そして乗っているユーザーは誰も気づいていない。
自動車整備士も気づいていない。

そして日産やスバルが突出してリコールが多い事実もない。

なぜか?

それは「車としては問題がないから」以外に答えがあるだろうか?
問題があれば車として不具合があるはず。

ひとつ言い切れることは「完成検査をしていた1978年以前の車より完成検査をしていない今の車の方が安全だ」ということ。

本当は日産やスバルの完成検査問題は品質の問題じゃない。
品質問題に繋がったかもしれないコンプライアンスの問題。

車を運転する側に立てば「品質の問題になるのか?」「コンプラの問題に留まるのか?」は、きっちに切り分けないといけない。

日産の完成検査問題が産んだ働く人の新たな思考とは・・・

もう一度言うがリコールの定義は「製品に欠陥があることが判明した場合」なんだ。

なのに日産はリコールに踏み切った。

この事実にものづくりで働いている人は驚いている人は多い。

この驚きの先にある考え方を持った人物もいる。

それは「実際の製品に問題がなくてもコンプライアンスに問題があれば、会社に打撃を与えることができるのか・・・」という考え方。

日産は250億、スバルは200億のリコールに関わる費用が算出されている。

完成検査問題が産んだ「恨みの放出」

日産やスバルの自動車メーカーに続き、ものづくりの不正問題は連鎖している。

神戸製鋼も品質データの改ざん。
しかも40年以上前からという声も聞こえてきている。

共通点は全て30年~40年もの間、バレなかったのに突然の連鎖が始まったのか?

これは内部告発しか考えられないよ。
製品が壊れることなくバレているのだから。

そしてもう一つの共通点。
それは3社ともここ10年で派遣社員が増えていること。

働いている人の環境が変化している。

派遣社員は会社が傾けば、まっさきに解雇される立場。

派遣法が何度も改定され「正社員になれるか?」と期待されてきたが、実際の法律は抜け穴だらけで正社員にはなれる人は少ない。

大手の企業は正社員だけ残業規制して、派遣は「他社のことだから知りません」って会社もある。

そんな環境に不満を持った内部告発社予備軍はたいさんいる。

その予備軍たちに「製品に問題なくてもコンプライアンス的に問題があれば一矢報いる事ができる」と知れ渡ったのが今回の日産のニュース。

完成検査問題やデータ改善問題から見えたもうひとつの問題。
それは「働かせの方」の問題だよ。

おそらくこの内部告発の連鎖はまだまだ続く。

品質が悪いなのになぜ壊れないのか?

神戸製鋼につづいて浮かび上がったのが東レの品質問題。
東レは自動車のタイヤに使われる材料を品質室長がデータを改ざんしていた。

品質が問題あるのに2社とも「実質的には問題ないと考える」と発言している。

もう一度繰り返すが神戸製鋼も東レも悪いことをしている。
神戸製鋼にも東レにも肩を持つ義理はちっともない。

けど、オレも「まぁ。問題ないだろうね」と思う。

普通の人に分かりやすく例えるならば身長が168cmの男性が「170cmです」とサバを読んだようなもの。
そして有料のお見合い業者に仲介してもらい「私は170cm以上の男性じゃなきゃ嫌」と言う女性に対して「私は170cmです」と言ってウソを付いた。

これはこれで問題はある。

しかし海外では身長150cm代の人が「私は170cmです」と言っているのが当たり前であり、何度もウソを付かれた経験があったらどう思う?

悪いことではあるが「日本のウソなんて可愛いもんだ」って思わないか?

これがものづくりの現状であり常識なんだよ。

つまり海外では笑ってしまうようなウソが当たり前にあり、それを見越して設計し試験をしているから「まぁ問題だろうな」という言葉になる。

ものづくりで働く人は「自分の会社の部品の方がやばいよな」と思っている人は山のようにいる。

ものづくりの現場で働く人に嘘を付きたい人なんていない

ニュースになっている会社で働く人に、進んでウソを付きたい人なんていないと思う。
そこにはウソを付かなきゃならん理由がある。

ウソを付かなければならない5つの問題が浮かび上がる。

【ものづくりの品質問題その1】品質改善されないのは労働問題

品質改善されないケースでありがちなのは、ある仕事を引き継ぎ、前任者がずっとウソを付いていたパターン。
ウソがてんこ盛りの状態で、ウソがあるとは聞かされず「はい。これからはお前の仕事ね」と渡される。

受け取った側はウソに気づくと「なんだこれ」と思うだろう。

で、よくよく調べるとその前の前任者も、前前任者もウソを付いて、フタを開けたら始めっからずっとウソであり品質に問題がある事に気づく。

そしてその製品は何十年も製造され、一件の不具合も市場からは出ていない事も同時に知る。

とはいえ問題は問題である。

その問題が製品として致命的であるほど、社内に報告した途端、帰宅時間は午前様になる事を覚悟しないといけない。

そして社内にも協力者はいないと思った方が良い。
関わったらみんな辛い労働環境が待っているから逃げる逃げる。

ましてや大企業ほど部署の縦割りが強く、なかなか垣根を超えられない。

それでも改善しなきゃ、思えますか?

家庭や子供・友人を捨てて「仕事人間にオレはなる!」と言えない人には改善ができない。

「自分も前任者と同じように見て見ぬフリてやり過ごそうか」という迷いはありませんか?

改善に求められる能力は3つ。

  1. 問題を見抜き改善する意欲
  2. キツイ労働環境の耐え抜く体力と覚悟
  3. 他人に「労働環境に耐え抜く覚悟を持たせる」人心掌握術

これを全て兼ね備える必要がある。

問題を見抜く能力がある人はたくさんいる。

けど自分が辛い労働環境と引き換えに改善したい人は大幅に減る。
そして周りの人を説得し巻き込むカリスマがある人になるとほとんど皆無。

おそらく何千人も仕事で出会った人はいるが、これが出来ると思う人物は1人か2人かな。
ちなみにその2人の家庭は崩壊しているよ。

だから30年も問題を放置されるわけ。

【ものづくりの品質問題その2】品質が改善されない理由は政治的な問題だ

ものづくりの品質の問題は技術的な話にとどまらず政治的な話に発展する。

ある製品に問題があったとする。
改善方法も分かり、改善する意欲の高いメンバーが揃っていたとする。

それでも「取引先になんて説明するのか?」って話が残る。

腹を割って「今まで10年間以上生産していた製品には問題が起きる可能性があります」と言えば良いのか?

そんな事を言ったらリコール。

製品を製造するコストだけではなく、お客様から買ってもらった商品を回収するコスト、部品を交換する工賃が損害賠償請求される。

あなたが社長、もしくはあと数年で定年を迎える上司だったら「Go」の指示が出せますか?

出せる人なんていないよ。

取り引きが停止されても不思議じゃない。

仕事はなくなり、株価は下がり、その先にあるのは・・・・。
「リストラ」「大幅な事業縮小」「最悪は倒産」

未来予想図は見えている。

これに対する現実的な対策方法は2つ。

  1. 見て見ぬふりを続ける
  2. 別の小さな問題があり、その問題をクリアーするためと誤魔化して説明しこっそり直す。

2番の上手い説明があったら、多くの人は取り組んでいるよ。
けどそんな都合の良く説明できるロジックなんて、なかなか見当たらない。

「やらなきゃならんが出来ない」

これが一部のやる気のある現場の声だよ。

だから顕在化されるまでは放置される。

ものづくりの品質問題の8割は技術的な課題じゃない。
こういった政治的な話になり、その対策が取れずいつの日か話が収束される。

答えになってない答弁が許されるのは本当の政治家だけ。
「重く受け止めて行きたい」で済む訳がない。
大臣が辞めて済む程度の話であれば、こんな楽は話はない。

問題が起きた場合、人が死ぬような製品でも同じ。
というか、人が死ぬ製品ほど問題が大きくなるから対策が取れない。

だから30年以上も品質問題は改善されない。

【ものづくりの品質問題その3】ものづくり品質はコストの問題

ものづくり業界は品質に厳しい。
ここ10年でも品質に力を入れるようになった会社は多い。

しかしこれには但し書きが付く。
それは「コストは維持すること」

ものづくりは一社で完結して製品が作れる会社は存在しない。
多くの協力会社が部品を収めてくれるから成立している。

その協力会社に対しての品質は性善説で動いている。

つまり協力会社が出す品質書類にウソはなく、全て正しいことが前提。

だから部品が送られてきたときに「本当に正しいの?」と検査する部署は無くなってきている。
だから神戸製鋼や東レから送られてくる部品に問題があっても誰も気づかない。

なんで性善説なの?
なんで部品を買った時に受け入れの検査をしないの?

それはコスト。

何千も部品がある中、それを定期的に検査するには多くの人手が必要になる。
しかも誰でも出来るような仕事じゃない。

正しく検査するには製品を熟知している事が不可欠。

しかし残念ながら、ものづくり業界では製品を熟知しているのは、ごく一部の人しかいない。

ものづくりで働く半分は人は何を作っているかも知らない。
その製品がもっている機能も言えない。

そして協力メーカーが「どうやって作っているのか?」も知らない。
そもそも半分以上の人は設計図も読めない。

設計図はすでに設計同士ではないと通じないモールス信号化してきている。

まさかと思う人もいるだろうが、今のものづくりはこれが現状。

正しく受け入れの検査をするためには、人材育成が必要でありそのコストは膨大になる。

「品質を改善できました!けど赤字です」では話にならない。

仕事である以上利益を出さなければならず、利益がでない仕事はそもそも仕事と呼んで良いのだろうか?

利益のない仕事はボランティアに名前を変えた方が良い。

もちろん協力メーカーが作った部品を受け入れ検査している会社もある。
あるにはあるが、その実態は「協力メーカーと同じデータになるように測定している」というのがほとんど。

測定したらデータ違っていたら仕事が増えるんだよ。
今日早く帰りたいのにデータ違う原因を急いで突き止めないと生産が止まってしまうわけ。

だから無理矢理にでも協力メーカーの測定に合わせる。

神戸製鋼の製品は長年に渡り寸法が違っていたんだよ。
けど、何十年もそのままだった理由は、気づかないのではなく、みんな気づかないフリをしていたってこと。

【ものづくりの品質問題その4】
「製品機能」と「ものづくりの現場」の両方を知っている人は皆無に近い現実

品質問題が改善されない理由として「改善できる知識を持った人がいない」って問題もある。

品質で必要な知識は2つ。

  1. 製品の機能を知っている。
  2. その製品がどうやって作られているかを知っている。

ものづくりの経験がない人は「プロがそんなの知らないわけがない」と思われるだろう。

ただ皆さんが知っている名のしれた大手に勤めていても、この2つの両方を知っている人は皆無に近い。

これには傾向があって、ものづくり業界は1次下請け~4次下請けぐらいまである。

その階層が上になれば製品の知識をもった人が多い。
しかし下の階層は情報が伝達されず「この製品はどこに取り付くの?」から分かっていない。

そしてものづくりの基礎の知識を持っている人は真逆になる。
上の階層の人達は「この部品はどうやって作っているのか?」をペーパー上でしか知らない。

ものづくりの基本である成形・加工・表面処理の現場を見たこともない。
当然ながら現場で起きている事は、理屈通りにはならない苦労も知らない。

お互いがお互いを理解できないまま。
多くの場合は責任の投げ合いが始まる。

これでは協力体制は組めずに、一向に改善が進まないまま終わってしまう。
改善が進まない原因は、幅広い知識を持ち、互いに理解し合う気持ちがないからである。

【ものづくりの品質問題その5】品質は当たり前。だからこそ出世の道は遠い

ものづくりの品質は100点で当たり前、と言われる。
99点では品質不良になる。

ただ現実には60点もごろごろあるし、下手すると30点の部品もある。

まさか命にかかわる部品に30点はないだろう・・・って思うかもしれない。
けどエアーバックのタカタの倒産を見てもらえば分かる通り普通にある。

あくまでもニュースになっているのは氷山の一角だ、と断言できるよ。

つまり最低限の目標値に対して現実は追いついていない。

問題がある部品は内部リークがない限りは世間に公にならん。
そして社内の誰がリークするかも分からん。

そうすると本当に危ない品質改善は社内の少数メンバーでこっそり行われる。
あまりに危なすぎると社内にも公表されていない。

下手すると会社の経営陣は、総じて知らないというケースもある。
途中の中間層で情報がストップしてしまうわけ。

だからチンケな品質改善を行ったら、大見得を切ってアピールするから出世する。
しかし、まじで危険な品質問題をクリアーしても出世はできない。

真面目で努力する人は報われない。

品質問題の本質は、臭いものにはフタをする会社の品と質の問題でもある。

ものづくりで働く人へ

おそらく今後、ものづくり業界は内部告発が連鎖し、多くの会社が晒し者になる。
当然、働く人にも直結した影響がある。

転職するのも悪いことではない。
ものづくり以外の仕事も魅力があるのも事実。

けど現実を考えると多くの人は、同じ職種への転職だろう。

焼畑になった数年後には新しい芽が出る。
そしてその芽は今よりも太く強い。

このピンチをいかにチャンスと思えるか?

この意識だけで次の時代は変わってくる。

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